福井の女子中学生殺害、前川彰司さん無罪の公算大…再審公判で検察「新たな立証しない」
1986年に福井市で起きた女子中学生殺害事件を巡り、殺人罪で服役した前川彰司さん(59)の裁判をやり直す再審公判に向け、裁判所と検察側、弁護団による三者協議が11日、名古屋高裁金沢支部であり、検察側は新たな証拠を提出しないと表明した。前川さんが無罪となる公算が大きくなった。再審初公判は来年3月に開かれ、即日結審する見通し。
三者協議は非公開。弁護団によると、検察側は「再審公判で新たな立証はしない」と説明した一方、有罪の主張を維持するかどうかは明らかにしなかったという。弁護団は、再審開始の決め手となった捜査報告書などを証拠請求し、検察側は全て同意する方針を示した。
来年1、2月にも三者協議が開かれ、3月の再審初公判では前川さんの意見陳述が行われる予定。審理は10月に再審開始決定を出した山田耕司裁判長が担当する。
前川さんは87年3月に逮捕され、一貫して否認。90年に福井地裁で無罪判決を受けたが、同支部で懲役7年の逆転有罪となり、最高裁で確定。服役後の第1次再審請求で2011年に再審開始決定が出たが、その後取り消された。
第2次再審請求に対し、同支部は今年10月、2度目の再審開始を決定した。確定審で有罪の根拠となった目撃証言について、再審請求審で検察側から開示された捜査報告書と矛盾すると指摘。「警察が誘導し、うその証言が形成された疑いが払拭(ふっしょく)できない」などと捜査を批判した。名古屋高検は決定に対する異議申し立てを断念し、再審開始が確定していた。
「冤罪だったと認め、相応の謝罪を」
前川さんは三者協議後の記者会見で、「検察は冤罪(えんざい)だったと認め、再審請求審まで証拠を隠していたことに責任を感じ、相応の謝罪をしてほしい」と求めた。弁護団長の吉村悟弁護士は「判決の日は30年以上活動してきたことが報われる瞬間」と話し、「前川さんと父親の礼三さんは元気な状態で無罪判決の日を迎えてほしい」と語った。