「自衛隊は軍隊」18歳高校生が違憲問う 名簿提供めぐり奈良で初の国賠訴訟
雪崩を打ち「提供」に
名簿提供が加速したのは19年2月、安倍晋三首相(当時)が自民党大会で隊員募集に「都道府県の6割以上が協力を拒否している」と述べ、「自衛隊9条明記」改憲論をぶってからだ。実際は、自衛隊が希望する紙・電子媒体による提供は約4割、住民基本台帳の閲覧や書き写しをあわせると9割近くが協力していたが、自治体は「閲覧」から紙・電子媒体による「提供」に雪崩を打った。防衛省によると、18年度は全国約1700自治体のうち、紙や電子媒体による「提供」は4割、683自治体だったが、22年度には6割、1068自治体になった。 弁護団の毛利崇弁護士は嘆く。「戦争中、自治体に兵役係がいた。国の手先になって、健康状態、馬に乗れるとか軍隊に役立つ技能を調べて兵隊を集めて、赤紙を配った。戦前が戻ったと思った。国に言われたら何をやってもええんか」 51年前、北海道長沼町のミサイル基地建設予定地の保安林指定解除を巡る「長沼ナイキ基地訴訟」で、自衛隊を憲法9条違反の「戦力」と認定した唯一の違憲判決が札幌地裁で出た。佐藤真理弁護団長は、提訴した3月29日の歴史的意義を力説する。 「8年前のきょう、安保法制が施行された。海外で戦争をする国に転換している。イラク自衛隊派遣差し止め訴訟では全国11カ所で14訴訟を行ない、08年、名古屋高裁で違憲判決を勝ち取った。奈良から、第二の長沼判決を目指したい」
長谷川綾・『北海道新聞』記者