「オレはまだボケてない!」<認知症が疑われる家族をどう病院に連れていくか問題>を解決する魔法のワンフレーズとは
厚生労働省によると、認知症の患者は2025年に約700万人まで達するとされています。一方で「認知症の症状は、お天気と同じで晴れたり曇ったり。思うようにいかない日があれば、心が通じ合う<晴れ>の瞬間もある。周囲はそんな<晴れ>を増やす方法を知っておくことが大切だ」と理学療法士の川畑智さんは語ります。その川畑さんいわく、認知症が疑われる家族を病院に連れていくためには良い方法があるそうで――。 【書影】 * * * * * * * ◆オレはまだボケてない 「なに? オレが認知症だと!? まだボケてないぞ!」 「病院!? お前が行け!!」 最近、ひどく物忘れが増え、生活にも支障が出始めている81歳のご主人を、なんとか一度病院に連れていこうと、必死に説得している中島さん。 ところが、「あなた、最近物忘れがひどいでしょ? 認知症の検査を受けてみたら?」とストレートに言ってしまったものだから、ご主人は大激怒。 「オレはおかしくない! お前が行け!」となってしまいました。
◆「どうやって病院に連れていくか問題」 本人の性格にもよりますが、こうした率直な物言いは、反発されがちです。 指を差されて「あなたおかしいわよ!」と言われるのですから、受け入れようがありません。 自分はおかしくないと信じている本人にとっては、「お前のほうがボケているんじゃないか」という結論になるわけです。 また、自分の異変に気づいている場合には、「もし認知症だったらどう生活すればいい?」「家族に迷惑をかけてしまうのでは?」「車の免許返納や、趣味もできなくなるのでは?」と、なにもできなくなる最悪のシナリオを想像し、漠然とした恐怖心を持ち、病院に行くことをためらってしまうことが少なくありません。 この「どうやって病院に連れていくか問題」は、全国をまわる講演でも、非常によく聞かれる悩みです。
◆ウソも方便 こうした場合、私はこんな言い方をおすすめしています。 「ねえ、最近、私、物忘れがひどい気がしてるの。一人で検査に行くのは不安だから、あなた、一緒に病院についてきてくれない?」 と、まるで自分自身に物忘れがあるように話し、警戒されないように病院への同行をうながすのです。 「ウソも方便」とはまさにこのこと。 お芝居をする感覚で、むしろ楽しんでしまいましょう。 事前に病院に連絡を入れておけば、そこは相手もプロ、心得たものです。 奥さんのニセの検査を終えたあとで、「せっかくだから、ご主人も一緒に検査をしてみましょうか」と、事前に打ち合わせたストーリーどおりにうまく運んでくれるでしょう(もちろん、ご本人には絶対に秘密ですよ)。 もし本人に自覚があれば、「そうか? そういえばオレも、物忘れがないことはないけどな」などと言って、ついでに自分も検査を受けてみようという流れになることもあります。