中村憲剛が語る「なぜ川崎フロンターレからは有望な若手選手が次々に生まれるのか?」
サッカー元日本代表の中心選手として、川崎フロンターレの司令塔として、華々しい活躍を重ねてきた中村憲剛さん。いつもフレンドリーな笑顔を絶やさずファンにもチームメイトにも愛され、信頼されてきたレジェンドが語るコミュニケーション&リーダー論。その後編です。 【前編】コミュ力こそ不世出のサッカー選手、中村憲剛の最強の武器だった!?
サッカー元日本代表の中心選手として、川崎フロンターレの司令塔として、華々しい活躍を重ねてきたレジェンド中村憲剛さん。プロ生活の18年を川崎フロンターレという一つのチームに捧げてきた中村さんは、2022年、40歳を機に現役を引退、その後は解説者を務めるかたわら、日本サッカー協会や川崎フロンターレのコーチに就くなど指導者への道を進み始めています。 そんな中村さんが『中村憲剛の「こころ」の話 今日より明日を生きやすくする処方箋』(小学館)という本を上梓しました。ある意味、中村憲剛流コミュニケーション論、リーダー論とも読める本書を通じて、中村さんがいかに自身の人生を切り開いてきたかをインタビュー。前編に次いで後編ではフロンターレでのチーム作り経験への思いと理想の監督像についても話を伺いました。
言語化能力が高まると、みんなでイメージを共有しやすくなる
── 昨今の若者は対話にマストな「言語化」を苦手とする人も多くなったと言われています。そこで苦労したことはありませんか? 中村憲剛さん(以下、中村) そもそもサッカー選手は話し上手でない人も多いので、会話の内容をシンプルにまとめることを心掛けています。僕の場合、つい、話好きで長くなってしまうんですが(笑)、それでもなるべく分かりやすく簡潔に対話を重ねることから始めています。 あと、言語化に馴れてないなと思う相手には、発言する機会を増やしてあげるようにしています。こちらが言って終わりじゃなく、相手に対して「どうしてそう思うの?」「それはつまりどういう意味?」など投げ返してあげることで、自己の考えを具体的に固める訓練になると思っています。
── なるほど。 中村 そういったラリーの積み重ねで、やがては試合中の戦術修正までもが確実かつスピーディに行えるようになっていくのです。言語化できるとサッカーの場合、みんなでイメージを共有しやすく、同じ絵を描きやすくなります。そうすると再現性が高くなるんです。 言語化能力が高いほど、試合の中で修正するのも早くなります。そのためにご飯を食べながら、お風呂に入りながらとか、何気ないコミュニケーションを意識していました。ちょっと足りてない人にしゃべらせてみようかとか(笑)。 ── それこそが、フロンターレの強さのヒミツですね(笑)。そういう話しやすい空気を作ることも大切なのかと。本では会話においては「心理的安全性」が大事だという話もありました。 中村 これを言ったらどう思われるかなぁとか、お前何言ってんのとか思われるのイヤだなとか。それで発言ができなくなることってよくあると思うんです。それがなくて、思ったことを言ってもみんなが、うんうん、そうだよねって言える組織が、心理的安全性が確保された場所であるということです。 ── あまりにもクールで意識高い系の人に囲まれていると、この意見バカにされるかも、的外れだったりするかもみたいに閉じこもっちゃうこと、我々でもあります(笑)。 中村 そうなると、誰か同じ人がずっとしゃべる会になりますよね? みんなモヤモヤした状態で、その組織って健全? 風通しいいですか? って言うと良くないですよね。一人ひとりが思ったことを言って、それを皆がちゃんと受け入れて、だけど、こうして行こうっていう方が、風通しがいいと僕は思うんです。