「阿部慎之助を一番警戒していた」25歳の田中将大が“楽天の日本一”のために巨人に投じた渾身の302球「アイツ、最後までいくと言ってます」
「アイツ、最後までいくと言ってます」
星野監督は7回、120球を越えた所で、佐藤コーチに交代を打診した。だが、佐藤コーチの答えは「駄目です。アイツ、最後までいくと言っています」だった。 9回、逆転タイムリーを打たれた高橋を152キロのストレートで三振に斬って取ったのは田中の意地だったが、球数は160球に達していた。 「最後までマウンドに立ってやろうという気持ちはありました。投げミスが多く、こういう大事なところで出てしまったのは、自分の力のなさです。今シーズン、もっときつい時があったし、コンディションはいつもと変わらなかった。最後は球場がどうやったら盛り上がるか考えました。三振をとれたのはよかった。明日は自分のできることをやりたい」 今年喫した初めての敗北に、田中は珍しく饒舌だった。 勝っても負けてもこれで終わりの第7戦。田中の負けじ魂が出たのは、3-0とリードし、日本一達成が見えてきた7回であった。本人が投げるというのだから、もう誰も止められない。また、それは節目、節目で田中を使ってきた星野監督も、望むところであった。 「最後は田中と決めていた。でも、アイツ、こっちをハラハラさせながら、キッチリ演出して、しめくくるよな」 星野監督がそう言ったように、リーグ優勝を決めた西武戦では、1死二、三塁のピンチを背負いながら栗山巧、浅村栄斗の3、4番に対して、8球続けてストレート勝負。連続三振で、優勝を決めている。日本シリーズ進出を決めたロッテ戦でも、今シーズン11打数4安打と打たれた井口資仁を、最後の打者として打ち取った。だが、さすがに160球を投げた翌日の登板である。いつもと様子が違って、力勝負を避け、変化球を低めに丁寧に投げていた。だが、この投球ができることが、今季の連勝に繋がったと嶋は言う。 「体調が状況を考えて、絶対に無理して三振を取りにいかない。こっちがサインを出しても危ないと思ったらボールにしてくれる。そういうことができるんですよ」 今度こそ、本当に「最後」の15球を投げ終え、日本一に輝いて、「最高のシーズンでした! 』とお立ち台で叫んだ田中。今季の成績はレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせ、26勝1敗3セーブという驚異的なものだった。 嶋は「田中のボールを受けたことは、捕手にとって最高の幸せでした」と言った。田中にとって最高の「贈る言葉」であった。 ◆初出:Sports Graphic Number841号(2013年11月14日売)『田中将大 絶対エース、渾身の302球』
(「Sports Graphic Number More」永谷脩 = 文)
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