「阿部慎之助を一番警戒していた」25歳の田中将大が“楽天の日本一”のために巨人に投じた渾身の302球「アイツ、最後までいくと言ってます」
日本シリーズ2度目の登板「投球ミスが多かった」
次回の登板までの5日間、いつも通りの調整を続けた田中が、2度目のKスタのマウンドに立ったのは、王手をかけた第6戦だった 「誰もが勝って当たり前と思っている時に投げることほどしんどいことはない」 これは、アテネ五輪のアジア予選の際に上原浩治が漏らした言葉だが、「王手? 気にしてません」と言った田中がいつもの精神状態ではないことは、嶋が一番わかっていた。 この日の投球内容は、本人も認めたように、ずいぶん投球ミスが多かった。原因は緊張による力みか、疲労か、体調か。第2戦では空振りが取れていた球をファウルされていたことが、調子が万全ではないことを物語っていた。 楽天は2回、相手のミスから2点を先制。田中はよくないなりに慎重に攻め、恐らく“田中の名前”も効いたのだろう、巨人打線を4回まで0点で抑えた。だが、「投手は初回、5回、9回に、ふだんと違う精神状態になる」(山田久志)というが、田中に異変が生じたのは、投手が勝ちを意識する5回だった。 この回の先頭打者は、同い年で、小学校時代には同じチームに所属した“ライバル”坂本勇人。かつて、「一枚上」と言われた坂本を、田中はここまで完全に抑え切って、見下ろせる存在になっていた。その坂本に甘く入ったストレート左中間に二塁打される。 「田中がカッとなって、アドレナリンを出す時は、得点圏に走者を置いて、三振を取りに行く時なんですよ」 と教えてくれたのは楽天のスコアラー・小池均だが、まさかの二塁打に熱くなった田中は、ボウカーから三振を取りにいき、見事、空振り三振に仕留める。嶋は今シーズンの田中の成長について「何がなんでも三振なんてことは考えていない。でも、三振を狙った時に、三振が取れるんです」と語ったことがある。そして、「もし、本塁打を打たれたら、自分の配球ミスです」と続けた。 続くロペスに対しては、警戒しながらボールから入り、2-0。その後、150キロ、149キロのストレートをファウルされる。ここで嶋の頭によぎったのは、第2戦の6回2死満塁でロペスを三振にとった内角152キロの快速球だったという。この場面では、ストレートをファウルにされたから、今度は、内角に変化球を投じた。だが、これが甘く入り、ロペスの一打は、レフトスタンドに飛び込む同点本塁打になってしまった。試合後、嶋は「自分のミス」とうなだれたが、田中にしてみれば、自分のコントロールミスの責任を全て背負ってくれる先輩の気持ちは本当にありがたかった。 巨人打線は、今までの鬱憤を晴らすかのように畳み掛ける。寺内はライト前へ、長野は初球をレフト前に運ぶ。重盗は失敗したが、亀井義行が四球を選んで一、三塁。マギーがマウンドに駆け寄って「腕を振れ」と言うが、田中の耳には入らない。高橋由伸相手に力勝負に出てセンター前にはじき返され、3点目を献上。まさかの逆転を許してしまった。
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