「阿部慎之助を一番警戒していた」25歳の田中将大が“楽天の日本一”のために巨人に投じた渾身の302球「アイツ、最後までいくと言ってます」
バッテリーが最も警戒した阿部慎之助
嶋が巨人の打者で最も警戒していたのが、阿部である。リードの課題は、いかに阿部を封じるか。初戦からそのことで頭がいっぱいだったほどだという。「何しろ、『巨人は阿部のチーム』と、原監督が言ってたくらいですから」と嶋は言うが、首脳陣からも阿部に対しては、「高低を使って攻めろ。不利なカウントになっても、四球は出して良いから、カウントを稼ぎにいくな」という指示が出ていた。嶋は田中と「阿部さん、村田さんは塁に出しても走られる心配がない。次の打者に集中していこう」と話し合っていた。 いつもより早くエンジンがかかった田中は危なげない投球を続ける。巨人先発の菅野智之も、楽天打線を寄せつけない。田中はかつて「同じ右の本格派の投手には負けたくないという思いが強い。絶対、先に点はやらないという気持ちで投げている」と語ったことがあるが、この日も同じ思いだったに違いない。 田中が大きなピンチを背負ったのは6回だった。四球、ヒット、四球で、2死満塁。打席には強打者ロペス。簡単にツーストライクと追い込んだ7球目、ファウルを挟んで、2-2になったところで、嶋はこの打席で初めて内角に構えた。「ボール球を挟んでの内角勝負」は、二人の暗黙の了解事項だった。152キロのストレートが内角を抉る。空売り三振。ガッツポーズとともに雄叫びが上がる。今シーズン、再三再四ピンチに際に出た“走者を背負ったときのアドレナリン”が全開したのだ。 「自分が作ったミス(四球で走者を出したこと)だから、自分で刈り取らなければいけないと思って投げました」 試合後、田中は涼しい顔でこう言ったが、何よりも嬉しかったのは、その裏、銀次が先制タイムリーを放ったことだった。“銀次、よく打ってくれた”と、同世代のチームメイトに感謝した。 楽天は7回にも1点を追加し、リードは2点に広がった。だが、8回1死を取ったところで、寺内に初球をレフトスタンドに運ばれる。明らかな油断だった。それは、ギアチェンジして阿部と村田から連続三振を奪った、直後の投球を見てもよくわかった。 田中は9回も三者凡退に抑え、127球の完投勝利。“いい状態で投げれば勝てる”――第2戦での登板が正しかったことを証明してみせた。それでも田中は言った。 「1点取られて残念です。やっぱり、完封したかった」 攻め続けた男が簡単にストライクを取りにいった結果の本塁打だったから、余計、悔しかったのかもしれない。 星野監督は「出していい四球と悪い四球がある。阿部に対して、四球か三振か、徹底して攻めたのがよかったな」と、バッテリーをねぎらった。
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