異次元の寿命。数千年使える炭素14ダイヤモンド電池とは?
人体も宇宙もカバーできる万能電池
「画期的な変化をもたらす」と声明で豪語するこの電池には生体適合性があるので、眼内レンズや補聴器などの医療機器に適しており、特にペースメーカーのように外科手術による電池交換が必要な機器で非常に実用的です。炭素14の外部被ばくによる健康へのリスクは大きくありませんが、体内に取り込まれると健康へのリスクが大きくなります。炭素14ダイヤモンドは電池を内部に閉じ込める構造になっているので、放射性崩壊によるリスクがないとのことです。 人工ダイヤモンドは耐久性に優れているため、長期にわたる宇宙探査ミッションのような、電池交換が容易ではない過酷な環境下でも使用できるといいます。また、地球内の遠隔地や地球外での長期プロジェクトで使用される、追跡用の無線自動識別装置にも電力を供給できます。 ブリストル大学のTom Scott氏は 「私たちのマイクロパワー技術は、宇宙技術やセキュリティ機器から医療移植片まで、幅広い重要な用途で活用可能です。今後数年間、業界や研究機関のパートナーと協力して、可能性をすべて追求できるのを楽しみにしています。」 と語っていますよ。
ダイヤモンド電池は気候変動対策にもなる
しかし、炭素14ダイヤモンド電池の恩恵を受けるのは医療や宇宙分野だけではありません。UKAEAの上席工程技師であるFatimah Sanni氏によると、UKAEAの科学者たちはダイヤモンド電池をほぼすべてのものに活用できる未来を思い描いているといいます。例として、同氏は小型衛星、コンピューターチップ、リモコン、腕時計を挙げています。 さらに、ダイヤモンド電池は、生産時に大量の温室効果ガスを排出し、不適切な廃棄によって有害な化学物質を環境に放出するリチウム電池に取って代わる可能性があります。リチウム電池を巡っては、児童労働や強制労働、先住民に対する人権侵害などの問題もありますね。 Sanni氏はこう話します。 「リチウムイオン廃電池にサヨナラです。ダイヤモンド電池のようなクリーンな電池があれば、気候変動を緩和できます。」 そう遠くない将来に、ダイヤモンド電池が業界に革命をもたらすかもしれません。早く天井に取り付けるタイプの火災報知機にも使えるようになって、あのうっとうしいこと極まりない電池切れのピーピー音を二度と聞かなくてすむ未来がきますように。
Kenji P. Miyajima