ついにLINEペイも撤退、瓦解するLINEの金融事業、LINEが描いてきた「経済圏」は画餅に終わるおそれ
PayPayは決済市場での地位を固めつつ、やがてLINEの金融事業全体を侵食していく。2018年11月には早速、加盟店向けの決済サービスでジャパンネット銀行(現PayPay銀行)と提携し、2020年にはスマホ証券のOne Tap BUYがソフトバンク傘下に入り、翌年にはPayPay証券へと鞍替えした。 その後もカードや保険、資産運用会社などがPayPayの名を冠してグループに集結。かたやLINEの金融子会社は続々と撤退に追い込まれ、昨年秋には金融持株会社のLINEフィナンシャルも消滅した。
■難しい若年層向けの金融サービス 5月にはNFT(非代替性トークン)取引を扱うLINEネクストがLINEヤフーの連結から切り離された。残されたLINEの金融事業は、無担保ローンのLINEクレジットや暗号資産取引のLINEジェネシスなどごくわずか。2社とも開業以来赤字が続いており、いつ撤退が表明されてもおかしくはない。 メッセージアプリを通じて1億人弱のユーザーを抱えながらも、金融事業の収益化につなげられなかったLINE。ある銀行関係者は「若年層向けの金融サービスは鬼門だ」と指摘する。信用力に乏しい若者には大口融資ができず、いざ貸し出せば焦げ付きが頻発する。保有資産も少なく、証券取引や資産運用で手数料を稼ぐこともままならない、というわけだ。金融業界にとっての空白地帯に照準を定めたLINEだったが、経済圏構想はついに実を結ばなかった。
今後、LINEヤフーはPayPayを軸に金融事業を深耕する。老若男女に無差別投下した広告やキャンペーンが奏功し、PayPayの連結決算は増収・赤字縮小基調にある。PayPay銀行も住宅ローンというコモディティー商品を低金利で提供し、躍進が続く。現実路線を歩むPayPay経済圏は、LINEの挫折が遺した教訓を生かせるかも問われている。
一井 純 :東洋経済 記者