【虎になれ】岡田は石井琢をホメた 失敗を重ねて成長してほしい阪神打線
「ホッとしましたわ」。午前11時40分、雨天中止が決定。虎番記者たちに交じり、所在なく甲子園の通路に立っていると、打撃コーチ・今岡真訪が通りかかった。「お疲れさん」と声をかけると苦笑しながら、そう返してきたのだ。 【写真】DeNAのチーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチを務める石井琢朗コーチ 何がホッとするのか。いうまでもない。打線の状態だ。現状は2位、首位の時期も長かったし、悲願ともいうべき連覇のチャンスはまだまだある。だが今季、球界全体の特徴とも言える「投高打低」の波にのまれたのか。開幕から阪神打線の「好調!」という時期は見ていない気がする。 責任者・今岡が胃の痛い思いをしているのは想像するまでもない。もちろん冗談交じりではあるが、昔から知る顔に思わず本音を漏らしたのか…などと思ってしまう。元々、3割打てば名選手といわれる世界、今更ながら大変だ。 指揮官・岡田彰布は前日、本塁打を放った大山悠輔の打撃について、結果が出れば他の選手が参考にすればいいという話をしていた。そして、この日。中止になった後、話す中で前日まで戦っている相手チーム所属の名前が出た。 「昔やったら、石井琢朗な。石井が現役でエエときも若い選手に言うたけどなあ。見てみ、あのフリーバッティングて。全部ライナーよ」。自軍は当然、相手の選手をも観察する岡田はそう話した。 石井は現在、DeNAのコーチだ。チーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチ。長い肩書だ。室内練習場で若い選手にボールを投げるなど、最後まで練習に付き合っていた石井に言ってみる。「名前、出てたで」と。 「なんで?」と言ったが、説明すると笑って少し打撃の話を始めた。基本、岡田は「泳ぐのをおそれず、前で打て」という理論。石井もそれに近い感じだったと自分で認めている。 「でもね。ポイントは自分でつかむしかないですよ。例えばウチの宮崎(敏郎)は前で打つと、あまりうまくいかない。とにかく自分のモノにたどり着くことが大事だと思います。選手にしても岡田監督が現役だった時のレベルにいくのは簡単じゃないですよ。失敗を重ねていかないと」 若い選手の多い阪神、失敗に失敗を重ねて成長していくしかない。これは事実だ。見守るこちらも辛抱が重要か。そんなことを思う雨の日だった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)