アウトドアで「もんじゃ焼き」ってマジかっ? やってみたら目から鱗のそのお味やいかに
火力調節の困難さが課題として残った
もんじゃ焼きには「これで焼き上がり!」という瞬間はありません。このスライム状のものをじっくり加熱しながら、軽く焦げついたところをコテでこそぎ取って、その部分だけを食べる。それをひたすら繰り返していくという、実に不思議な料理なのです。 ほら、こうして、こうしてだんだんもんじゃが焼けてきて……となる予定だったのだけど、あれ? あれれれ? なんだか、異様に焼けるのが早いですね。もんじゃ汁が予想外のスピードでどんどん固まっていくじゃありませんか。もんじゃの汁が産湯代わりと言わんばかりだったわたくし、大ピンチ! ここでいくつかの理由に思い至りました。 ひとつは、炭火の場合だと火力調節が困難であること。なるべく控えめな火力にしたつもりだったんですが、炭火が放つ熱量は思いのほか強かった。そして肉を焼くときのように、まめにトングで位置を変えるわけにもいかず、もんじゃからはどんどん水分が失われていく。少しずつこそぎ取って食べるなんて、悠長なことはしていられないのです。 もうひとつ、決定的なミスがありました。材料を混ぜているとき、ほんの一瞬お好み焼きを作ってるような錯覚に陥り「あー、玉子もないのかー。いや、炒飯用に持ってきた玉子が余ってるじゃん!」と気づいてしまい、その快感のせいで自分がいま作っているのがもんじゃであることを打ち消してしまったんですね。無意識って怖い! もんじゃ焼きには玉子なんて必要ないのに、何の疑問も持たずにシャカシャカかき混ぜていた愚か者……。そんなわけで、野外でのもんじゃ焼きは料理として失敗しましたが、そこそこうまく焼けた部分だけ選り分ければ、酒のつまみとしてはけっこうイケます。 外は暖かく、鉄板は熱かった。だが、野外で飲む酒は甘いのに、ぼくのもんじゃは苦かった。コンロから立ち上る陽炎の向こうに幻のもんじゃを思い浮かべ、缶酎ハイを啜るぼくなのでした。
とみさわ昭仁