「80歳・草野仁さんの若さの秘訣は、“あれもこれもやりたい”と足し算で考えること」【和田秀樹対談②】
草野仁の“太陽のようなパワー”はどこから生まれるのか。東大の先輩・草野と後輩・和田秀樹が“人間のエネルギー”に迫る。『80歳の壁』著者が“長生きの真意”に迫る連載。2回目。 【写真】草野仁×和田秀樹、対談の様子
新しいことに挑戦する
和田 草野さんの声って、やはりすごい。よく通りますよね。僕は昔からテレビを見ていますがずっと変わらない。直に聞いて感激しましたよ(笑)。 草野 ハハハ、そうですか。 和田 年を取ると、普通は小さくなったり低くなったりするんです。でも元気な人の声は変わらない。先日、浜村淳さんのラジオに出演しましたが、声は昔の通りでした。 草野 歌手の方もそうです。男性も女性も音域が低くなっていく傾向があります。すごく驚かされたのは五木ひろしさんで、昔から全然変わらないんです。 和田 さすがですね。日頃の訓練の賜物でしょうか 草野 それもありますが“心の張り”も大きいと思います。雑誌でたまたま読んだのですが、五木さんは、1年にひとつ楽器をマスターすることを目標にしていて、その数が16になったそうです。 和田 それはすごい。 草野 それで私、ある時にスタジオで偶然、五木さんとお会いしたので、聞いてみたんです。「16種類の楽器をマスターされたそうですが今は?」と。すると「18種類になりました」と言うので、驚きました。 和田 進化してるんですね。 草野 はい。これは私の想像ですが、五木さんは最高の音楽を表現するために、伴奏者に注目したのでしょう。音楽は歌い手だけでなく、ひとりひとりの音がハーモニーになって生まれますからね。実際に楽器を弾いてみることで演奏者の気持ちや、小さな問題点も理解できる。五木さんに尋ねると「その通りです」と言っていただいて。 和田 素晴らしいですね。 草野 本当にそう思います。ちなみに、いちばん難しかったのは三味線だったと。 和田 頭で考えるだけじゃなく、行動することがすごい。楽器をマスターするのって、一つでも大変なのに、それをいくつも。その熱意はどこから湧き出てくるんですかね。 草野 業界の未来を考えてのことだと思います。五木さんが話してくださったんですけどね。「自分が生きている歌謡曲の世界は百年くらいの歴史がある。先達の作詞家・作曲家がどんな思いで、どんな努力をしてこの世界を高め、守ってきたのか。それを自分がいろいろ勉強し、次の世代に受け継がないといけない」と。それを聞いて、感動しましてね。 和田 いい話ですね。 草野 ご自身の歌だけでなく、歌謡界全体のレベルアップや未来を考えている。そうやって、よりよいものをつくり出そうとされている方がおられる。まさにプロフェッショナルですよね。 和田 五木さんは70代後半だと思いますが、見た目も若々しいです。年齢に関係なく、新しいことにチャレンジするというのは、精神医学的にも、非常に重要なことなんです。 草野 仰る通りだと思います。