島田珠代「些細なことで娘と大ゲンカ。作り置きした食事を食べなくなった。〈ママの役目も終わりなのね〉テーブルに置いたメモに、娘からの返事は」
「パンティーテックス」「男なんてシャボン玉」など唯一無二のギャグと独創的な動きで部人気の、新喜劇を支える看板女優・島田珠代さん。そんな芸歴36年になる島田さんが、幼少期から仕事、恋愛、自分らしさ、女として生きることなどを赤裸々に綴った初エッセイ『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』。今回はその中から、10数年ぶりに一緒に住むことになった中学生の娘とのエピソードを紹介します。 【写真】娘さんとのツーショット * * * * * * * ◆2回目の大ゲンカ 娘と2ヵ月間口もきかない大ゲンカがあってから、あんなことはもうないようにしようと心に固く誓ったのですが、またもや大ゲンカをしてしまいました。 ケンカのきっかけは娘のプール開き。学校から水着を用意するようにと言われていたのですが、娘はすっかり忘れていて「買い忘れたからママのを貸して」と言いました。 水着を買い忘れたということに対して少しだけイラッときて「なんで忘れんの?」と愚痴っぽく言ってしまいましたが、娘ときちんとコミュニケーションを取るべきだと理性も働き、その後は穏やかに話を続けました。 水着の形はある程度自由で構わないらしく、クラスの子は今どきのかわいいデザインの水着を買うはず。しかし私の持っている水着は、胸元がガバっとあいて、下もおもいっきりV字になった、本当にしょうもない形の水着でした。 それでもないよりマシだろうと思って貸したのですが、プールの授業を終えて学校から帰ってくると「めっちゃ恥ずかしかった!」と娘。そらそうやわ、私の水着を女子高生が着てるんやから。
流石に恥ずかしかっただろうなという気持ちも理解できたので、娘にお金を渡すことに。 そして、「1万円渡すから買っておいで」「最近の水着って1万円で足りるんかな……?」「足りると思うねんけどわからんから2万円」というやりとりの後のこと。 疲れていて眠い娘と、お金を直接取りに来ないことに不満を抱いた私とのケンカが始まりました。 「もう眠いからテーブルに置いといてや」 「ちょっと!! 部屋に戻らんとここまで取りに来てよ!」 「今、疲れてるって言うてるやん! 置いといてよ!!」 部屋に引っ込もうとする娘の態度に、私はカチンときてヒートアップ。ようやく、渋々といった不満げな顔でテーブルの上に乗った2万円を娘が取りに来ると、私は怒りに任せて娘の身体を少し小突くように押してしまいました。その余波で、私と娘の間にあった諭吉さんはもみくちゃになり、ひらひらと床の上に舞い落ちていきました。 そのお金をひったくるように取っていた娘にイライラしながら、ケンカしたいきさつをひろしさんに話しました。すると、思いもしない言葉が返ってきたのです。 「どうして疲れていると言っているのに、無理に取りに来いと言うんだ。テーブルに置いといてと言うなら、そうすればいいだけだろう。 珠代さんも態度にショックを受けたのかもしれないけど、娘さんは母親に身体を押されてどんな気持ちだったか分かるか。 珠代さんは大人だから、明日になればこのケンカも流せるだろう。だけど、娘さんの心には母親に押されたことが傷として残るかもしれない」 そう言われて、自分がどれだけひどいことをしたのかが理解できました。相手が娘ではなかったら、きっと身体を押したりしなかった。だとしたら、娘にだってしてはいけないことなのです。 私が言葉以外の方法を取ったのは「親が言っているんだから」と無意識に宿っている押し付け。以前あんなに大きなケンカをしたのに、私はまた間違えたのです。
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