ファッション&ポップカルチャーに“かわいい”革命が到来 日本のアニメや漫画による影響も!?
2024年1月25日から4月14日まで、英ロンドンのサマセットハウスでは“かわいい”のスタイルを探る展覧会「CUTE」が開催されている。「かわいいは完全に世界を席巻しました」とキュレーターのクレア・キャタロールは言う。「今日ではかわいらしさは子どもじみているとはされず、日常の美学の一つとして受け入れられているのです」
“かわいい”の主流化はインターネットが理由?
「キュート」という言葉の使用は、1930年代にまでさかのぼる。アメリカのこのスラングは、キユーピー人形やミッキーマウスなどのキャラクターとともに世界中に広まった (ちなみに私の初めての言葉は「ミッキーマウス」だった)。キャタロールは、“かわいい”の主流化は、部分的にはインターネットに起因すると語る。彼女は、展覧会の壁に掲げられた計算機科学者ティム・バーナーズ=リーの言葉について言及する。「人々がインターネットを主に使用する理由になっているもので、最も予想しなかったことは何か」との質問に、ワールド・ワイド・ウェブ(いわゆるインターネット)の発明者である彼はシンプルに「子猫」と答えたのだ。
“かわいい”が快調なヒットを飛ばしているのは、今日において特に説得力がある。なぜなら、恐怖のコンテンツが延々とタイムラインに流れる24時間のニュース配信とこの美学の流行は、完全に同時に起きているからだ。「かわいい」が持つ明白な少女らしさは、世界中で起きている女性に対する暴力やリプロダクティブ・ライツの後退など、容赦なく流れてくる悪いニュースと無関係ではない。これらの悪いニュースがネットを占有しているため、赤ちゃん用ピアノを弾いている猫や、リスボン家の姉妹がプロムに行く様子(『ヴァージン・スーサイズ』)など、愛らしいだけのコンテンツに私たちが引きこもるのは理にかなっているのだ。
オンラインの“かわいい”文化は、巨大テック企業のもくろみへの抵抗の一形態だと、ポッドキャスト「Nymphet Alumni」の共同司会者でトレンド予測会社「The Digital Fairy」のカルチャー担当編集を務めるビズ・シャーバートは言う。「今のインスタグラムの様子を考えてみてください。以前はある意味、過度に感傷的でしたが、今では完全に無毒化されて、無色になってしまった。ビッグテックがあなたに望むのは画面を永遠にスクロールし続けることです。かわいらしさは、これに反する乱雑さとして機能するかもしれません」。“かわいい”の賛同者であるシャーバートはメールの署名欄に日本の顔文字で作ったクマを入れている。