「角田裕毅選手をレッドブルに乗せてくれるようにお願いしました」/渡辺康治HRC社長インタビュー(2)
HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長が、現地時間10月18~20日にオースティンで行われた2024年F1第19戦アメリカGPの現場を訪れた。 【写真】角田裕毅(RB)を激励する渡辺康治HRC社長 渡辺社長はハースF1とTOYOTA GAZOO Racingの提携、レッドブルと提携してきたホンダの若手ドライバー育成の今後、そして現在RBからF1を戦う角田裕毅のレッドブル昇格の可能性について語った。 ──────────────────────────────── ──10月11日に、トヨタ/GRがハースと業務提携を締結したと発表がありました。それについて、ホンダはどう受け止めていますか。 渡辺康治HRC社長(以下、渡辺社長):日本でのF1人気がさらに盛り上がるという意味で、ホンダ、そしてHRCとして歓迎しています。われわれもホンダ・レーシングスクール鈴鹿(HRS)やホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)を通して、世界に挑戦しようとしている日本の若者たちを応援していますので、お互い刺激し合って、ひとりでも多くの若者が世界に羽ばたいてほしいと思っています。 ──ホンダは現在、レッドブルとの提携してドライバーを育成しています。この関係について、今後どうなって行くのでしょうか。 渡辺社長:レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)さんと協議をして決まっていることは、基本的にはレッドブルとホンダがジョイントをしてドライバーを育成するのは2024年を最後にするということです。というのも、2025年にジョイントで育成しても、2026年にはF1でレッドブルとホンダはパートナーではないからです。 ──そうなると、現在レッドブルとホンダのドライバーとして、全日本スーパーフォーミュラ選手権でレースしている岩佐歩夢選手はどうなるのでしょうか。 渡辺社長:ジョイントでの育成は2024年限りとなりますが、岩佐選手の選択肢は両方あります。レッドブルから必要だと言われれば、レッドブル系のチームに乗る可能性は残っていますし、アストンマーティンから必要だと言われれば、アストンマーティンに行くことも可能です。 ──角田裕毅選手も同じように考えていいのでしょうか? 渡辺社長:角田選手はホンダの育成出身ではありますが、いまはもう育成ドライバーではないので、ホンダであろうと、レッドブルであろうと、自分のチャンスを一番生かすことができる所で走ることができます。ホンダの育成出身だからと言って、2026年以降はレッドブル系のチームには乗せないということはありませんし、われわれもそれを止めることはしません。 ──角田選手がレッドブルへステップアップすることをファンは期待していると思います。ホンダとして何かプッシュはしていますか。 渡辺社長:われわれとしてはレッドブルに昇格するポテンシャルを角田選手は持っていると思うので、その評価を適正にしてもらって、できるだけ早いタイミングでレッドブルのクルマに乗せてくれるようにお願いをしました。レッドブル側も『その機会を考えています』という段階に来ました。 ──2026年からパートナーを組むアストンマーティンとホンダがジョイントでドライバーを育成する可能性はありますか? 渡辺社長:これから協議していくことになると思いますが、基本的にはアストンマーティンとも一緒に育成していくことができればいいなと思っていますが、いまはまだ具体的なことは決まっていません。いずれにしても、2026年以降にわれわれが育成しているドライバーが上り詰める先はアストンマーティンとなりますから、効率的にステップアップしていける道を作るための協議を開始していくことになるでしょう。 ──2026年に向けての抱負をお願いします。 渡辺社長:2026年のF1活動は、すべてが新しくなります。レギュレーションも変わりますし、ホンダがパートナーを組むチームも新しくなります。ですから、まずはホンダが自分たちで立てた計画をしっかりと遂行して2026年の開幕を迎える準備をするということです。 当然、ホンダがF1に挑戦する以上、勝つことが大前提ですが、ライバルたちがいることですから、実力は開幕してみないとわかりません。なので、1年目から絶対にチャンピオンを取りますと言えるほど甘くはないと思っています。われわれは合理的な目標を立てていると思いますので、それをやることができれば、おのずと結果はついてくると思っています。 ──第4期に復帰したときは「絶対に撤退しない。といつつ、6年後に撤退しました。今回はどうですか。 渡辺社長:絶対ということはないですが、われわれとしてはF1から撤退しないよう、いかに持続可能な組織体を作っていけるかが大切だと思っています。四輪のHRCがスタートとき、私には4つのやりたいことがあり、その中のひとつに本社のホンダの事業との連携があります。 HRCというブランドがないと本業が辛くなるという存在になれれば、ホンダもレースをやめづらくなると思います。そのためにはHRCブランドの事業、たとえば市販車のHRCエディションみたいなものが売れていけば、F1もより持続可能になっていくと思っています。 [オートスポーツweb 2024年10月24日]