第2回:AIがデジタルプロダクトリサーチに及ぼす影響
今後3年間でAIはプロダクトリサーチをどのように変革するか データの収集、分析、実装にかかる時間が短縮されることで、「AIによってプロダクトリサーチは大幅に迅速化する」と回答者は予測しています。 また、AIテクノロジーは情報の民主化にも貢献します。生データやフィードバックをインタラクティブで実用的なインサイトに変換することで、リサーチャーとプロダクトマネージャーは、これまで以上に情報を有効に活用できます。この変換により、プロダクトリサーチャーは、従来の数分の1の時間でより有意義な結論を導き出すことが可能となります。 企業は、AIの活用でプロダクトリサーチを自動化・迅速化することで、新機能・新製品をより早く市場に投入できます。このスピードの向上は市場の需要に対応するのに役立ちますが、AIの広範な利用によりアイデアが画一化し、企業の差別化が難しくなるという懸念もあります。それでも、タイムラインの短縮と複雑なデータの取り扱いの改善により、プロダクトチームの作業負荷を軽減することができます。 まとめ これまで見てきた通り、プロダクトリサーチにおける現状の課題に対して、AIの活用が有効な解決策となる可能性が高まっていることが分かります。本稿のまとめとして、AI活用の主要なポイントと具体的な活用例を紹介します。 1. AI活用により、時間を要するデータ分析プロセスを迅速化 回答者の過半数は、プロダクトリサーチにおいて最も困難なのはデータ分析だと考えています。また、回答者の83.8%がAIによってこれらのプロセスが迅速化すると予測しています。 具体的なAIの活用例: AIを使用してフィードバックを収集し、関連するトピックに分類することで、リサーチプロセスを迅速化 ブレーンストーミングのパートナーとしてAIを活用し、プロダクトのアイデアを生成・検証 信頼できるAIレコメンデーションを通じて、戦略的な意思決定を迅速化 2. AI活用により、プロダクトリサーチのプロセス全体を自動化 調査に参加したプロフェッショナルの65.2%は、既にプロダクトリサーチでAIを活用しています。彼らはフィードバックからインサイトを抽出し、ユーザーをセグメント化し、予測分析を行うなど、さまざまなタスクにAI技術を利用しています。 プロダクトリサーチの自動化におけるAI機能の活用例: インタビューの質問を作成・フォーマット化して、サマリーやレポートを作成 複数のソースからデータを収集し、全てのフィードバックから一括してインサイトを抽出するなど、各種タスクを自動化 ユーザーのトレンドと製品の異常状態を監視 3. AI活用における人間の役割 回答者の約40%は、「ハルシネーション」など、誤った判断につながる可能性のある生成AIのインサイトの精度を懸念しています。信頼できるAIソリューションを選ぶことで、不正確なデータに伴うリスクを最小限に抑えつつ、プロダクトリサーチでAIのメリットを最大限に活用できます。ツールの向上はインサイトの向上につながる傾向がありますが、テクノロジーは人の能力の延長に過ぎず、データ処理やルーチン分析などの「現場作業」を処理する一方、人間はオペレーションの背後の「頭脳」を担い続けます。 AIツールを効果的に活用し、コントロールを維持するためのステップ: オンラインのレビュー、評価、その他の社会的証拠を確認し、定評のあるベンダーを選択することで、AIツールの正確性と信頼性を確保 AIツールを選択する際、セキュリティ責任者と自社のユーザー・リサーチャーを関与させることで、データのセキュリティとインサイトの品質を確認 重要な意思決定を行う前に、経験豊富なリサーチャーによって生成AIのインサイトを検証 総じて、回答者はAIがプロダクトマネージャーやリサーチャーに取って代わるものではないと予測しています。AIは膨大なデータを迅速かつ効率的に処理できる一方、人間にしかできないニュアンスの理解、創造性、戦略的思考には欠けています。 今回は、調査結果を基に、プロダクトリサーチにおいて自動化と迅速化に貢献し、課題解決を促進するAIの現状と、そのプロセスと品質を管理する人間の役割について紹介しました。次回は、機能横断的なチームが持続可能で長期的なビジネス成果を定義するための先行指標「ノーススターメトリック(North Star Metric)」について紹介します。 仁枝かおり Amplitude Analytics 代表執行役社長 2024年1月、Amplitude Analytics 代表執行役社長に就任。Amplitude入社以前は、Infoblox、Recorded Future、Vectra AIなど、数々の外資系企業でカントリーマネージャーを歴任、日本市場におけるGTO(Go To Market)戦略や組織運営、日本法人の立ち上げ、さらに事業の中核領域の転換などを成功に導いた経験を持つ。