世界の終末時計は「残り90秒」 ウクライナやガザだけでない“終末”の条件をマルクス研究者が語る
現代は過去の歴史の堆積のなかから生まれる
本書は『「19世紀」でわかる世界史講義』(日本実業出版社、2022年)および『資本主義がわかる「20世紀」世界史講義』(同、2023年)に続く世界史講義シリーズの第三巻で、1989年以降の現代を扱っています。現代を語ることはきわめて難しい。それは予測を伴うからです。確実な予測などあり得ない。 しかし、あり得ないとしても、悲惨な歴史に導く要因を取り除けるような努力をしつつ、予測をしなければなりません。そうでなければ、現代に生きている者としての責任を果たせないからです。不幸な歴史を加速するのではなく、それにブレーキをかけるのです。現代は、過去の歴史の堆積の中から生まれています。歴史から学ぶことで、危険をなるべく避けねばなりません。 最後にマルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の冒頭の言葉を書いておきます。 *** 「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大なる世界史的事象と人物は、いわば二度出現すると述べている。彼は、次のことを付加することを忘れていた。それは、一度目は、悲劇として、二度目は、茶番劇として出現するということである。……(中略)……人間は自らの歴史をつくるのだが、自ら選んだ自由な断片からつくるのではなく、直接に依存している、伝統的な、与えられた状況のもとでつくるのである。死せるあらゆる世界の伝統は、生きているものの額の上に、悪夢のようにのしかかる」(拙訳) *** 的場昭弘(まとば・あきひろ) 日本を代表するマルクス研究者、哲学者。1952年、宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。マルクス学、社会思想史専攻。元・神奈川大学経済学部教授(2023年定年退職)。同大で副学長、国際センター所長、図書館長などを歴任。著書に『資本主義がわかる「20世紀」世界史講義』『「19世紀」でわかる世界史講義』『最強の思考法「抽象化する力」の講義』(以上、日本実業出版社)、『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『未来のプルードン』(亜紀書房)、『カール・マルクス入門』(作品社)、『20歳の自分に教えたい資本論』『資本主義全史』(以上、SB新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上、光文社新書)、『マルクスを再読する』(角川ソフィア文庫)、『希望と絶望の世界史』(前田朗氏との共著)、『いまこそ「社会主義」』(池上彰氏との共著・朝日新書)、『復権するマルクス』(佐藤優氏との共著・角川新書)、訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』『新訳 初期マルクス』『新訳 哲学の貧困』(以上、作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)など多数。 協力:日本実業出版社 日本実業出版社 Book Bang編集部 新潮社
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