世界の終末時計は「残り90秒」 ウクライナやガザだけでない“終末”の条件をマルクス研究者が語る
危険なのはウクライナ、ガザだけではない
このような対立はウクライナやガザだけでなく、西アフリカ、カリブ海地域、台湾、バルカン半島など、各地で起こっています。こうした物的条件だけでなく、それを動かす政治を司る人物に関しても、危険な人物が選ばれてしまっています。アメリカのバイデン、フランスのマクロン、ドイツのショルツ、ウクライナのゼレンスキーなどの西側の政治家たちは、西欧の価値観が普遍的であるという確信を持っている人々であり、それがゆえに直面する問題にきわめて好戦的な態度をとっています。 他方、ロシアのプーチンや中国の習近平も、非西欧の可能性と非西欧の力の拡大に確信を抱いているがゆえに、西欧に対して一歩も引く気がありません。こうしたときには、ちょっとしたことで戦争は拡大していきます。
リーマンショックで勢力を伸ばした中国やロシア
21世紀の幕開けは、国家対テロ組織という“テロとの戦争”でしたが、次第に国家間の戦争に変貌していきました。そのきっかけはリーマンショックでした。多国籍化した企業が倒産寸前に追い込まれたことによって、企業は再び国家回帰し始めたのです。 しかも、リーマンショックによって逆に利益を得たのが、中国やロシアなどの非西欧勢力であったことも重要です。投資先と市場を失った西欧は、非西欧に巨大な投資、すなわち資本流入と技術移転を行なったのです。それが非西欧の経済力・政治力・軍事力を一気に発展させました。
国家権力に監視・統制される国民
加えて、2019年の新型コロナウイルスの感染パンデミックの発生によって、人々の自由な移動は禁止され、国民は国家権力の下に監視され、統制され始めました。こうして為政者は、国民を国家を構成する個々人の集合体ではなく、国家のために尽くすパーツであるかの如く考えるようになりました。その結果、政治家の権力は増大し、あたかも独裁者のように振る舞い始めたのです。あたかも「民主君主制」とでもいえる状態へと変貌したのです。 独裁的傾向が強い非西欧だけでなく、西欧でも民主主義を守ると称しながら、その実、独裁に近い権力者を次々に生み出してしまっています。 ロシア人、ウクライナ人、ヨーロッパ人、イスラエル人、それぞれ一人ひとりを考えれば、おそらくだれも戦争など望んでいません。むしろ戦争はやめたいと思っています。しかし、為政者はどんどん戦争を拡大している。停戦の話し合いも受け付けないほど頑固な独裁的権力を、世界の為政者が持ってしまっているともいえます。 こういう時、一発のミサイルの誤射で世界戦争は始まるのです。人類は、永久平和を達成できないのでしょうか。それは悲しいというしかありませんが、余命幾ばくもない私のような老年世代は、孫たちに平和な社会で生きて欲しい。できれば西欧社会が、現実を受け止め、非西欧社会に戦争なく道を開いて欲しい。しかし、これまで西欧が、非西欧に対する搾取で巨大な利益を上げてきた以上、それを実践するのは困難かもしれません。