大阪万博「関連費」に約13兆円 便乗の広域開発「理解できない」
「大阪・関西万博の会場建設に黄信号 半導体工場がライバル」では、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)に関わるゼネコンの実情などを紹介してきた。今回は、批判も多い、膨れ上がる万博関連予算や経済効果について見ていく。 【関連画像】24年1月1日に石川県で発生した能登半島地震。最大震度7が観測され、多くの人が避難生活を余儀なくされた(写真=共同通信) 万博が多くの人から“敬遠”される大きな要因は、人手や資材不足による建設単価の急騰に伴って膨れ上がった予算だ。 「費用の抑制に向け、政府として管理、監督責任を果たす。さらなる増額を認めるつもりはない」。岸田文雄首相は23年11月の衆院予算委員会で、会場建設費の上振れが続いた大阪・関西万博についてこう強調した。 ●会場建設費2度の修正 会場建設費は誘致時の1250億円から、20年に1850億円、23年秋は最大2350億円に膨らんだ。資材や人件費の高騰が主因だ。会場建設費は国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する。人件費や警備費などを含む運営費も当初想定の809億円から23年末には約1160億円と改められた。 建設費用が2度修正されたことについて「予算管理ができていない。国家プロジェクトなのに一体何をしているのか」と批判が噴出した。 大阪・関西万博の中止を求めている大阪市の市民団体「どないする大阪の未来ネット」の馬場徳夫事務局長は「万博会場となる夢洲(ゆめしま)の土壌改良費用などを計上する夢洲土地造成事業の収支見込みは長期赤字だ」と指摘する。 こうした中、周辺のインフラ整備などで巨額の費用がかかることも明らかになった。 政府の国際博覧会推進本部事務局が23年12月(24年2月更新)に公表した大阪・関西万博関連の国の費用によると、会場建設費以外に、インフラ整備計画関係の施策として約9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実現や水素発電技術の実証などの「アクションプラン」に登録された施策に約2兆8000億円などが計上された。会場建設費や日本政府館建設なども含め、万博関連費用は総額約13兆円に及んだ。 具体的に見ていく。例えば、関西地方の「広域的な交通インフラ整備」には約5兆9280億円を計上。新名神高速道路や淀川左岸線、四国横断自動車道などの整備や、なにわ筋線の整備、大阪モノレールの延伸などが含まれている。 万博関連の公共投資について、阪南大学経営学部の桜田照雄教授は「公共事業の決定手続きは、民主性・透明性・合理性・公正性がクライテリア(基準)だ。それを踏まえると、大阪・関西万博の運営と、四国や紀伊半島などでの道路建設との因果関係が理解できない」と指摘。さらに「数分の時間短縮しか望めないなにわ筋線の建設など『(万博という)イベントを利用した都市開発』という手法そのものにも疑問がある」とする。 政府は、こうしたインフラ関連費用について「大阪・関西万博後も社会経済活動を支える基盤として継続的に利用されるものであり、万博のための新規または追加的なものではない」と説明している。 そんな中、24年1月1日に石川県を中心に能登半島地震が発生した。