大阪万博「関連費」に約13兆円 便乗の広域開発「理解できない」
「イベントは楽しめるのか」
被災者が多くいるのに、万博を開く必要があるのか──。震災後「中止すべきだ」などと、開催効果を疑問視する声も強まった。大阪市に住む女性は「避難生活を強いられている人もいる。そんな中、誰が行くのか。イベントを楽しめる雰囲気ではない」と語る。 もっとも、万博開催の経済効果はすでに算出されている。民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)は今年3月、2兆7457億円(基準ケース)になると試算した。同研究所は、万博開催を奇貨として関西全域に来訪者を呼び込む工夫をすることで、宿泊数や日帰り客の数を向上させる「拡張万博」の開催を提唱する。 試算では、関西地域間産業連関表を活用した万博関連事業費の経済効果(生産誘発額)が1兆4104億円、消費支出の経済効果(同)が1兆3355億円だった。消費支出は、広域関西エリアから約1560万人、関西以外の国内から約910万人、海外から約350万人が来場すると想定した。 拡張万博の効果は消費支出に現れる。国内宿泊客や海外客の宿泊数が増えると想定した「拡張ケース1」では3兆2384億円、拡張ケース1に加えてさらに国内日帰り客が20%増えるとした「拡張ケース2」では3兆3667億円になった。 ●若い経営者の挑戦に価値 同研究所の稲田義久・研究統括は「経済波及効果を府県別で見ると、基準ケースでは大阪府が75%を占める。一方、拡張ケースでは他府県のシェアが上昇し、『拡張ケース2』になると、大阪府のシェアは53%まで低下する。関西各地が連携し魅力的なコンテンツを提供できれば、経済波及効果をもっと高められる」と話す。 例えば、3年に1度、岡山と香川両県の島々などで開かれる瀬戸内国際芸術祭は万博開催期間に開かれる予定で、連携による相乗効果が期待できるという。 経済産業省も万博の経済効果は約2兆9000億円と試算する。経産省の関係者は「万博の経済波及効果はインプットに対するアウトプットであり、短絡的なもの。万博は、若い経営者のチャレンジ精神を引き出すプライスレスの大きな価値がある」と話す。 万博は日本の技術を世界中に発信したり、次世代につなげたりする絶好の機会になり、数字では測れない効果もある。今後、万博の効果を最大化させるための議論や工夫がさらに必要になるだろう。
小原 擁