発熱や長引くせき、マイコプラズマ肺炎が流行中 症状の特徴と治療法を医師に聞く
マイコプラズマ肺炎の患者数が増え続けています。子どもがかかることが多い病気ですが、大人も感染し、重症化する場合もあります。記者の子どもも今年6月、マイコプラズマ感染症にかかり、完治まで1カ月近くかかりました。有明こどもクリニック豊洲院で院長をつとめる村上典子医師に取材し、症状やケアの方法について、体験記とともに伝えます。
【話しを聞いた人】医師 村上典子さん
（むらかみ・のりこ） 有明こどもクリニック豊洲院長、有明みんなクリニック有明ガーデン院医師。国立病院機構東京医療センター、イムス三芳総合病院、明理会中央総合病院の小児科で経験を積み、2019年から同クリニックで診療にあたる。3児のママ小児科医としての経験を生かし、YouTube「のりちゃんの子育てチャンネル」などで子どもの健康や子育てに関する情報発信も行う。
長引くせきと発熱が特徴
――マイコプラズマ肺炎・感染症はどのような病気ですか。 肺炎マイコプラズマという特別な細菌によって引き起こされる肺炎、感染症です。肺炎の所見が見られればマイコプラズマ肺炎と診断します。飛沫（ひまつ）・接触感染し、感染力がとても強い病気です。 一年を通して感染が見られますが、数年に一度流行が見られます。迷信だと思いますが、数年に一度「オリンピックイヤーに流行する」と書かれた医学書もあるくらいです。 私の勤務しているクリニックでも6月末ごろから患者さんが増え始め、7月初頭からは1日10人程度の患者さんを見るようになりました。久しぶりに流行の波が来ていることを肌で感じています。 ――感染するとどんな症状が表れますか。 長引くせきと発熱が特徴です。のどの痛み、倦怠（けんたい）感、頭痛、筋肉痛、じんましんのような皮疹、腹痛や嘔吐（おうと）などの胃腸症状が表れる場合もあります。 せきは最初、軽いせきから始まり、だんだん強くなる傾向があります。夜間に悪化することも多いです。熱は高熱が続くケース、微熱から始まり徐々に高熱になるケースなどさまざまです。 ――どのくらいの年齢層に多い病気ですか。 5～14歳くらいのお子さんや学生など若者に多い感染症です。赤ちゃんや高齢者には感染しなかったり、感染しても軽症で済んだりするのも特徴です。 ――どのように診断しますか。 一般的に、診察の所見や胸部X線などから診断します。確定診断するためには血液検査が必要ですが、結果が出るまでに時間がかかるため、軽症の場合はあまり用いられません。 マイコプラズマには咽頭（いんとう）ぬぐい液を採取して診断する迅速検査キットもあり、陽性の場合はほぼ間違いないと判断してよいでしょう。ですが検査キットは偽陰性になることが多いため、注意が必要です。 ――どのように治療しますか。 マイコプラズマに効果のある抗菌薬を処方し、せきや発熱など、患者さんの症状に応じ、せき止めや解熱剤などのお薬も同時に処方します。 重症化して酸素濃度が低下したり、脱水症状が進んだりしている場合は、入院して治療が必要になる場合もあります。 ――家庭ではどのような症状に気をつけてケアをするべきでしょうか。 マイコプラズマの怖いところは、感染した細菌が身体に悪さをするというよりも、自分の身体がマイコプラズマにびっくりして過剰な炎症反応を起こすことにあります。 親御さんにできることは、身体を冷やしたり薬を使ったりして熱をやわらげてあげること。水分補給を促し、体力が消耗しないように栄養バランスを考えた食事を与えること。そして体調が回復するまでは家でゆっくりと過ごさせて、無理をさせないことだと思います。 お子さんに気になる症状が表れたら早めに受診し、しっかりお薬を服用させることも重症化予防のために大切なことです。 ――学校への登校の目安はありますか。 マイコプラズマは出席停止扱いになりうる感染症です。かかりつけの医師に相談し、主要な症状が治まってから登校するようにしましょう。 ――潜伏期間が長く、人によって症状が異なることから「歩く肺炎」とも呼ばれます。人に感染させる期間はどのくらいですか。 潜伏期間は2週間前後と長いのが特徴で、発症する7日ほど前から発症後1カ月以上人に感染させる可能性があります。ひどいせきが出ていたり、高熱が出ていたりする時期は最も人に感染させるリスクが高くなります。 人によって症状も程度も異なり、風邪だと思って出歩いている人や肺炎になっていても元気な人もいます。気づかぬうちに感染を広げてしまう怖さがあります。 ――どんな感染対策が有効ですか。 手洗い、うがい、消毒という基本的な感染対策を徹底しましょう。マイコプラズマは1度感染しても一生の免疫はつかず、再感染します。お子さんをしっかり看病できるように、親御さんも感染対策を怠らず、気をつけていただけたらと思います。
