「物流重視」への転換必要 サプライチェーン・ロジスティクス研究所の久保田代表、伊勢新聞政経懇話会で講演 三重
伊勢新聞社政経懇話会の11月例会が25日、三重県津市新町のプラザ洞津であり、サプライチェーン・ロジスティクス研究所代表の久保田精一氏が「物流危機はなぜ起きたのか? 物流の課題と解決策を探る」と題して講演した。久保田氏は、運転者数の減少などで物流の維持が困難となる「物流危機」は構造的な問題で、相当程度長期的に継続するとの懸念を示し「物流重視」への転換が必要と説いた。 久保田氏は、運転者数減少の原因として、少子化▽若者の運転離れ▽中型免許、準中型免許の創設―などのほか、働き方改革の一環でトラックドライバーに時間外労働の上限規制が始まったことも挙げた。「収入が優先。稼げてなんぼが本音」として、給与増が伴わない時間削減はドライバーの離職増加につながる可能性があるとした。 また、日本の物流サービスについて「水準が海外に比べて非常に高い」一方で「やり過ぎ」「過剰」な面もあると指摘。さらに、物流を管理している役員クラスの人が少ない▽物流専門職の新卒採用がほとんど行われていない▽物流の部署が不況期リストラの標的にされがち―などの「物流軽視」の風潮が、物流部主導の改善が難しく、過剰サービスが発生する原因になっていると説明した。 その上で、「運賃の値上げは荷主の利益を削ると考えがちだが、業務を効率化して運賃単価を上げれば両立は可能。そのためには、トップレベルの戦略と関与が必要」と提言して「キーワードを挙げるとすれば『物流重視』への転換が必要」と結論づけ、「物流重視」の視点で「ローコストオペレーション」を実現した北欧発祥の世界的家具量販店イケアの実例など紹介した。 久保田氏は昭和46年生まれの熊本県出身。東大教養学部卒業後、水資源機構、日本システム開発研究所、日本ロジスティクスシステム協会・JILS総合研究所を経て平成28年から現職。城西大非常勤講師、流通経済大客員講師、中小企業大学校講師なども務める。