絶妙すぎるキャスティングに、怖すぎる展開…「3000万」異色の“闇バイトドラマ”がNHKで生まれた背景
共同脚本といっても1話分を4人で手分けして書いているわけではなく、各話を1人ずつ書いている。そのため、各回、作家の個性が出て競作的な感じもおもしろさの1つである。 初回、いかにも海外ドラマ風なスリリングなムードではじまって(作:弥重早希子)、第3話では突然、音楽劇みたいなノリになり(作:山口智之)、第6話では、いよいよ奥島に夫婦の秘密が明かされるやりとりが小劇場みたいで(作:松井周)、全体のムードの転調で視聴者の予測を覆し、刺激を与えてくれた。
チーフライターは決めず、海外ドラマにおけるショーランナーというチームを引っ張る役割を担っているのが、このプロジェクトの中心人物であり演出を手掛ける保坂慶太だ。 保坂はNHKの局員で、朝ドラや大河ドラマなどの演出をしながら、一時期、アメリカに留学し、海外の制作手法を学んでいた。『3000万』はその学びの成果を生かす作品である。 選抜チームで海外ドラマの構成を徹底的に研究し、全員が情報を共有し、技術も一定レベルを保ったうえで、それぞれの個性を上乗せしているので、どの回も密度が濃く、隙もない。
■この限界をどう突破できるか ただあまりに隙がなさすぎるのが、良くも悪くもNHK。 終わりに向かって、義光の作った曲に火がつきはじめるのだが、その曲の歌詞は「明けない夜はない」「いつだってやり直せるんだ」という皮肉。 どんなについてないことがあっても地道にコツコツ、やっていれば、家族3人、いつかいいことがあったのに、目先の欲望に流されたために取り返しのつかないことに……という教訓めいた感じもちらついてきた。
いや、もちろん、闇バイトだめ絶対、ではあるのだが、警鐘としてドラマがまとまってしまうとしたらNHKドラマの限界かな、という気もするのだ。この限界をどう突破できるか、『3000万』の出来はNHKドラマの今後を占う大事な試金石であろう。
木俣 冬 :コラムニスト