絶妙すぎるキャスティングに、怖すぎる展開…「3000万」異色の“闇バイトドラマ”がNHKで生まれた背景
「同情するならカネ(金)をくれ」 1994年にユーキャン新語・流行語大賞に選ばれたこのセリフで安達祐実は大ブレイクした。 【写真】リアルすぎ…得体の知れない「犯罪組織の面々」を演じる実力派俳優 当時12歳だった彼女は『家なき子』(日本テレビ系)というドラマで、貧困のあまり金を盗んだり暴力を振るう父を殺そうとしたりするダークヒロインであった。 あまりに悲惨な自分の人生を生き抜くために悪事に手を染めるしかない、天使のように愛くるしい少女のダーティーなキャラ設定。それを安達祐実は見事に演じて日本中を沸かせたのである。
■「社会の闇」が似合う安達祐実 あれから30年、安達祐実は目下、3000万円を巡るクライムサスペンス『3000万』(NHK、土曜22時)のヒロインを演じている。闇バイトに関わる3000万円をネコババしようとして転落していく主婦・祐子役がハマっている。なぜか安達祐実には社会の闇が似合う。 祐子はコールセンターで働く派遣社員。夫・義光(青木崇高)は元ミュージシャンで、いまはわけあって警備員をやっている。2人には1人息子・純一(味元耀大)がいる。郊外の一戸建てに住んでいるものの、生活は決して楽ではない。
ある夜、祐子が運転する車がバイクと事故を起こした。それをきっかけにバイクに乗っていたソラ(森田想)が持っていた3000万円が転がり込んでくるが、その金は犯罪組織と関係するやばいものだった。 金を警察に届けるという選択肢も脳裏をよぎるが、タイミングを逸するばかりで、義光と祐子は結局、一部を使ってしまう。ごまかせるわけもなく、犯罪組織や警察からじわじわと追い詰められ、平凡だった生活が大きく崩壊していく。
お金を返そうとしてなかなか返せないドタバタ喜劇かと思ったら、洒落にならない深刻さで、祐子と義光は常に選択を間違えて、どんどん立場を悪くする。 とくに祐子は、追っ手を湖に突き落として殺人容疑者になる可能性まで作った揚げ句、使ったお金の返済のために闇バイトに加担することになって、罪に罪を重ねていく。 夫の夢が破れて家計も楽でなく、コールセンターでは顧客からも上司からもハラスメントを受けている祐子に同情の余地はあるものの、彼女はいい大人なのであり、子を持つ親なのである。でもそれが、貧困が増加する一方の現代の実情であるとしたら……。