COP28 で浮き彫りになった、ファッション界の「持続可能性3.0」とエネルギーへの投資
異業種間のコラボレーション
移行にふさわしいエネルギー源として議論されているのは、再生可能エネルギーだけではない。12月6日、ガブリエラ・ハースト氏は、米国初の国際核融合戦略のローンチに関するディスカッションに参加した。チョルノービリ(チェルノブイリ)のような歴史的な出来事が核融合のイメージの汚点となっているが、このイベントに参加した専門家は、このエネルギー源に再び注目するよう呼びかけている。「私たちは情報の隔たりがあるコミュニティに暮らしている」とハースト氏は講演で語った。「科学界は核融合の可能性についての情報を持っているが、ファッションのコミュニティや他のコミュニティはそうした情報を持っていない。そこでより多くの希望をもたらすために、情報を交差させる時が来ている」。 異業種間のコラボレーションは、ファッションがその影響にどう取り組むべきかについての議論をリードしている。「ファッションは農業か石油化学のいずれかが供給元となっている」と話すのは、COPに参加しているサステナブルファッションコンサルタント会社グリーンウィズスタジオ(GreenWith Studio)の創業者、メアリー・フェローズ氏だ。「ファッションを前進させる唯一の方法は、新素材のバイオテクノロジー企業、循環型経済の考え方に関連する廃棄物処理業者、綿花に関する農家など、さまざまなマルチセクターのコラボレーションと官民パートナーシップである」。
気候変動への適応を優先課題に
気候変動への適応もCOPの大きなトピックだった。グローバルサウスの国々が気候の悪化に適応するための支援として昨年発表された「損失と損害基金(The Loss and Damage Fund)」は、現在7億ドル(約1019.2億円)に達しているが、ライクロフト氏によれば、これは「洪水1回分をカバーするもの」であって、グローバルノースの国々が引き起こした被害を考慮するには少なすぎるという。 「山火事や洪水、高潮による浸食など、将来発生するであろう自然災害を考えると、そのなかにはファッション産業の影響に直結しているものがあり、気候変動による移住や生息地の喪失、生活基盤の侵食といった影響を受けて、いちばん苦しむことになるのはグローバルサウスの人々だ」とフェローズ氏は語る。 「現時点では基金には十分な資金がないが、優先的な議題となっている」とフェローズ氏は述べ、状況には希望があるとした。「人々の生活や家屋、遺産を破壊しないという道徳的な責務があるが、財政的な義務やビジネス的な義務は自己破壊行為をしないことだ。気候変動への適応を優先課題としないブランドは、素材調達の問題やサプライチェーンの崩壊に直面する可能性がある。 「このような大きな会議では私たちは世界に対して大きな視野を持っているが、(関係者を)考慮するとまた別の視点になる」と、コットンコネクト(CottonConnect)のCEO、アリソン・ワード氏は言う。同社は持続可能な綿花プログラムに取り組んでおり、農家が地球温暖化に適応できるよう支援している。「役員室では遠く離れた場所からあまりにも容易にサプライチェーンを俯瞰している。だが農民たちは最近、インドで大雨が降って家から出られないということについて話していた。道路はぬかるんでいて、崩れ落ちることもある」。 異常気象は、農産物である原料の調達に依存するブランドに行動を促しているが、場合によっては既存の再生可能プロジェクトの妨げにもなっている。「インド北西部のソーラーパネルが設置されている地域では、季節外れの豪雨が何度かあった」と、コットンコネクトのシニアディレクター、パラカッシュ・メナケル・フィリップ氏は語った。「その雨でかなり深く浸水し、ソーラーパネルがダメになってしまった」。