2018年の日本政治を振り返る~目立った安倍政権の政治手法
今年の国会は、いくつもの重要法案が成立した一方で、財務省の決裁文書改ざんが発覚するなど議会制民主主義が焦点にもなりました。9月には自民党総裁選で安倍晋三首相(党総裁)が3選を果たし、2021年9月までの政権運営に道を開きました。2018年の日本政治について、政治学者の内山融・東京大学大学院教授に振り返ってもらいました。 【表】「忖度」に「○○ファースト」……流行語で振り返る2017年日本政治
◇ 2018年の日本政治について、主な出来事を通じて振り返りたい。総じていえば、目標に向かって邁進する現政権の政治手法が目立った一年であった。
●通常国会
2018年前半の通常国会では、森友・加計学園問題が大きな争点となった。森友学園問題では3月に財務省の決裁文書改ざんが発覚した。改ざんの内容などから、同学園との土地取引が特例的に優遇された背景には首相夫人の昭恵氏の“関与”があったのではないかと取りざたされた。決裁を経た行政文書が改ざんされて国会などに提出されるという、本来ならばあってはならないことが起こったため、公文書管理のあり方も注目された。 加計学園問題では5月に柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致が行われた。柳瀬氏は加計学園の関係者と首相官邸で会っていたことを認めたため、国家戦略特区の下で、同学園グループ・岡山理科大学の獣医学部設置が認可されたのは安倍首相の影響力によるものではないかとの疑いが広まった。 一連の問題により内閣支持率が大幅に下がり、9月の自民党総裁選で安倍首相の3選がなされるか、状況はいったん流動的になった。 しかし、野党の追及は深まりを見せなかった。このような中で6月に行われた新潟県知事選挙で与党候補が勝利したため、流れが変わった。守勢だった政権・与党が強気に出るようになり、統合型リゾート(IR)法案(いわゆるカジノ法案)、参院選挙制度改革法案、働き方改革関連法案など、野党が反対する法案の審議を進め出した。 6月末には、政権が通常国会の最重要法案と位置付けていた働き方改革関連法が成立した。これは、残業時間の上限規制や、一定の労働者を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度を導入するものである。7月中旬には、参議院の定数6増などを柱とする参院選挙制度改革法が、会期末の7月下旬にはIR法も成立した。内閣支持率も反転上昇し、安倍総裁3選の流れができあがっていった。