「責任回避と保身を考えたかも」厚労省OBらが明かす紅麹サプリで死者続出の小林製薬の杜撰な危機管理
紅麹問題の杜撰な危機管理意識
紅麹をつかったサプリメントによる健康被害で小林製薬は3月29日午後、大阪市内で記者会見を開き、小林章浩社長が5人の死亡を含む一連の健康被害について謝罪した。サプリメント関連と思われる入院患者は114人に上り、体調不良の通院や通院希望者が680人になると明らかにした上で、治療費を負担するとした。 【画像】医師が解説 腎臓が異常をおこしたとき、細胞はどうなってしまっているのか 「紅麹コレステヘルプ」、「ナイシヘルプ+コレステロール」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」等の製品について3月27日に大阪市は製品の回収を命じる行政処分を出し、手元にある場合は絶対食べないようにと注意喚起している。しかし、流通量が多いため回収には数ヵ月かかる見込みだ。 3月31日時点で、健康被害は急性腎不全(尿細管間質性腎炎からの急性腎障害)とみられ、限られたロットの紅麹にプベルル酸が検出されたと報じられている。紅麹カビ毒には「シトリニン」という腎毒性の強いカビ毒があると指摘している報道もある。これから特定されていくはずだ。 紅麹含有製品が原因の腎疾患について、医師から小林製薬に第一報が寄せられたのは、今年の1月15日だった。被害が増え、小林章浩社長に報告が上がったのは22日後の2月6日。自主回収を発表したのが3月22日。実に67日後のこと。あまりに遅すぎる。しかも、保健所に通報したのも発表直前であった。トップへの報告後も保健所に通報せず、被害を拡大させつづけた責任は重い。 小林製薬の危機管理の意識はあまりに杜撰だ。元厚労省医系技官がこう明かす。 「当該サプリは新製品ではありません。第一報の詳細は分からないが、小林製薬としては第1例段階では、因果関係があるか否を判断するのは困難であったでしょう。しかし2例目、3例目と類似の報告が上がってきた段階で疑問は確信に変わらなければならない」 危機管理としては、2例目の時点で「異変」として対処する必要がある。危機管理で最も重視しなければならないのは、被害のリスクの最小化である。この「紅麹サプリメント問題」のリスクとは、言うまでもなく消費者への健康被害だ。この視座が小林製薬にあっただろうか? 自社に及ぶ損害を最大のリスクと考えていたのではなかったか? 腎臓専門医もこう続ける。 「被害者リスクを減らすためにやるべきことは、とにかく広報でした。まず、サプリメントの問題を公にし、それ以降の服用を防ぐのが最優先事項です。それなのに、トップへの報告は22日後だった。様々な理由があると思いますが、ここで生じたと考えられるのは“正常化バイアス”だと思われます」 “正常化バイアス”とは何なのか。 「予期しない異常事態が起きても、そんなことはあり得ない」といった先入観から「これは正常範囲内だから、これ以上問題は起きないだろう」と心を平静に保とうとする働き、これが“正常化バイアス”なのだ。