「本当の俺のことは誰も知らないんだ」谷中敦だけが気が付いたジョン・レノンと奥田民生の“共通点”
〈「冷めたユーモアや、力の抜けた笑いの感覚と……」谷中敦が奥田民生と意気投合した“もう一つの理由”〉 から続く 【写真】この記事の写真を見る(9枚) 幾度となく共に酒を飲み「民生さんからダメ出しをくらい続ける」と笑いながら語る、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦。演奏をしていく中で気が付いた、ジョン・レノンと奥田民生の共通点は……。(全2回の後編/ 前編 を読む) ◆◆◆
聴いている人の心を震えさせる「歌声の魅力」
――「美しく燃える森」(2002)の民生さんのボーカルは艶っぽくて魅力的でした。民生さんの歌声の魅力は全般的にどこにあると思いますか? 谷中 かつてジョン・レノンさんが自分のボーカルを評してこんなことを言っていたんです。「僕はたいして歌がうまくないかもしれないけど、自分のシャウトで人を盛り上げることならできる」って。たぶん若い頃だと思いますけど、民生さんの声も人を盛り上げる、興奮させる声なんですね。しかもシャウトだけでなく、小さい声で歌っていても、聴いている人の心を震えさせる。 スカパラのメンバーから聞いた話では、「俺がラブソングをマジに歌ったらみんな泣いちゃうから、そんなに真面目に歌わないんだ」と民生さんが言っていたそうです。「酒飲んで歌うくらいがちょうどいいんだよ」って。「だから楽しくてつい飲み過ぎてしまう。西日本では本当の俺の声は誰も知らないんだ」って嬉しそうにしゃべっていたのは見たことがあります。本気でそう考えてるのかはよくわかりません。 ――民生さんは一緒にお酒を飲んでいて楽しい方ですか? 谷中 楽しいですよ、もちろん ――話していてためになるとか、そういうところもありますか? 谷中 僕が民生さんにいろんなことを言って、民生さんからダメ出しを食らいつづけるイメージです、つねに。それによって学ぶことはいっさいないんですけど(笑)。ずっとダメ出しを受けて、嬉しいなと思いながら聞いています。そして反省せずに、またダメ出しを食らう。そういう付き合いをずっとさせてもらっている感じです。面白がってくれたと思うんですよね、酔っぱらっていた僕を。だからまあ、それはそれでいいかなって。