「フェアネス」「原初の魅力」「自分を超える!」WOWOWがドキュメンタリー番組で伝えたいパラスポーツの真髄とは
パラリンピックの3つの魅力
田中氏は、パラスポーツの魅力について、 (1)スポーツとしての原初的な魅力に溢れていること (2)フェアネスの概念が最上位にあること (3)勝利以上に自分を超えることに意義があること の3つを挙げる。 そのことを示す象徴的な出来事もあった。 リオオリンピックが間近に迫った頃、ロシアで国家ぐるみでドーピング隠しをしていた事件が発覚した。するとIPC(国際パラリンピック委員会)は、IOC(国際オリンピック委員会)に先駆けてロシア選手の出場停止を決めた。 パラスポーツでは、選手の障害によって細かくクラス分けが実施されている。選手は厳格な審査を受ける必要があり、時にはクラス分けの結果に納得できず、不満を持つ選手も少なくない。だからこそ、ドーピングで自己の能力を偽ることはフェアネスの価値を崩す行為で、勝利のみを最上の価値とすることはパラスポーツの根幹を揺るがす行為とみなされた結果だった。 パラスポーツの魅力をテレビを通じて伝えることには、多くの意義があるはずだ。田中氏はそう考えている。 「今の世界は、他者に対してどんどん不寛容になっている。インターネットには情報があふれ、SNSが発展して、自分の価値観に合った情報にはどんどん深く知れるようになったけど、自分と違う意見の人に対しては不寛容でバッシングもする。そこにAI(人工知能)技術が入ってきて、人間がますます操作されやすくなっている。そんな時代だからこそ、パラスポーツの価値があるのではないかと、僕は思うんです」(同) では、その魅力をどうやってテレビで伝えるのか。それは「フィロソフィー(哲学)の具現化」だという。その意味を紐解くには、田中氏が日本テレビ時代に培ったプロ野球や箱根駅伝などをテレビ中継した経験がヒントとなる。 第3回(最終回)では、田中晃氏に箱根駅伝中継の秘話や、氏が貫くスポーツ放送の信念について聞く。 写真/越智貴雄[カンパラプレス]・ 文/西岡千史
パラスポ+!
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