7割の小中校で未設置 教室のエアコン設置が進まないのはなぜ?
埼玉県所沢市で先月15日、教室のエアコン設置をめぐる住民投票が行われました。これは、航空自衛隊入間基地の騒音のために窓を締めきる周辺の小中学校に暑さ対策としてエアコンを設置するかどうかの賛否を問うたものです。市条例が定めた「多数票が有権者の3分の1以上」という条件に届かず判断は先送りされましたが、小中学校のエアコン設置はこれまでもたびたび議論になってきた問題です。この住民投票によって、改めて公立小中学校のエアコン設置率の低さが注目されているのです。
「我慢することも必要」根強い精神論
文部科学省が3年に1回の割合で行っている調査によれば、全国の公立小中学校のエアコン設置率は29.9%。前回調査の18.9%に比べると大幅に増えていますが、いぜん公立小中学校のうちの7割はエアコンが付いていません。一方、気象庁が1931年から2010年に全国の15地点で調査した結果、最近30年間の最高気温35度以上の年間日数が最初の30年間の1.7倍に上っていることがわかり、気象庁は地球温暖化の影響を指摘しています。文科省が教室の温度について「人間の生理的な負担」から「夏は30度以下、冬は10度以上」、もっとも学習に望ましいのは夏季で「25度~28度程度」としていることを考えれば、公立小中学校のエアコン設置率はやはり低いとも思えます。 では、なぜエアコンの設置されている小中学校が少ないのでしょうか。 一つには教育関係者や市町村に「子どもには暑さを我慢させることが必要」といった「心頭滅却」の精神論が根強くあるためともいわれます。実際、昨年6月に熱中症対策などから小中学校へのエアコン設置を求めた懇願を千葉市議会が不採択とした際は、自民党議員が「エアコンを設置して体調を崩したこともある。環境への適応能力をつけるには、ある程度、耐える能力を鍛えることも必要だ」と発言して話題になりました。住民投票を実施した埼玉県所沢市の藤本正人市長も「家でも学校でも冷房のなかでは、子どもの身体機能も弱まる」と主張しています。