パス1本で局面を変えられる"魔術師"、米須玲音がインカレ男子MVPに 川崎ブレイブサンダースの救世主となるか
ケガと戦い、ディフェンスを磨いた4年間
高校時代から世代トップクラスのポイントガードとして名をはせ、日大に入学後もすぐに輝きを放った。真骨頂は広い視野から繰り出すアシスト。パス1本で局面を変えられる稀有(けう)なプレーヤーだ。2021年の関東大学選手権(スプリングトーナメント)では1年生ながらアシスト王を獲得し、チームの15年ぶりとなる優勝に貢献。昨年と今年の関東リーグ戦でも、2年連続でアシスト王に輝いている。 一方で、ケガに苦しんだ4年間でもあった。1年目のオフシーズンは川崎ブレイブサンダースの特別指定選手としてプレーしたBリーグで右肩を脱臼。2年目は新人戦後に右ひざの前十字靭帯(じんたい)を損傷。3年目はリーグ戦で肩のケガが再発し、そこから手術とリハビリを経て、4年目のリーグ戦でようやくコートに戻ることができた。 「ケガをしてしまったことで、バスケットよりトレーニングに励む時間の方が多かったです。けど、その分しっかり上半身と下半身のトレーニングができましたし、そのおかげでディフェンス力をつけることができたんじゃないかなとも思っています」 高校時代に60kgだった体重は、75kgまで増えた。日大への入学当初、米須はディフェンス練習が大半を占めることに戸惑ったそうだが、この4年間でディフェンスへの意識と重要さを学んだことも、成長の証だ。「ディフェンスは、うまい下手よりも、まずは気持ち。その中で自分は前からプレッシャーをかけて、相手に嫌な思いをさせることを意識していますし、そういった意識づけも今のディフェンス力につながっていると思います」
苦戦を強いられている川崎の救世主となれるか
大学日本一が決まると米須はしゃがみ込み、高校時代とは違う涙を流した。表彰台に立ち、金色の紙吹雪が舞う中、笑顔でMVPのトロフィーを掲げた。 「大学バスケの4年間は、半分以上の大会に出られなかったというのが事実です。でも、自分がケガしてる時でも周りの4年生がしっかり声をかけてくれましたし、その分、今シーズンは自分としても4年生のために、後輩たちのために日本一にならないといけないと思っていました。このメンバーで最後まで戦えてよかったですし、最高の景色が見られて本当にうれしいです」 苦しんだ末につかんだ頂点の余韻に浸る間もなく、魅惑のポイントガードはBリーグへ戦いの場を移す。所属チームは高校3年時から縁がある川崎ブレイブサンダース。今シーズンの川崎は、いまだかつてないほどの苦戦を強いられている。米須にかかる期待は決して小さくないが、本人はいたって自然体だ。 「自分は今までのバスケ人生でやってきたことを出すだけです。Bリーグでもしっかり自分を出して、少しでもチームに貢献できるようにプレーするだけだと思っています」 淡泊にも聞こえるが、その言葉には確かな自信と決意が詰まっているように思えた。
第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 男子決勝
12月15日@オープンハウスアリーナ太田(群馬) 日本大学 70-63 東海大学 ※日本大学は15年ぶり13回目の優勝
小沼克年