中国船が関与か…バルト海で海底インフラ損傷 デンマーク海軍が追跡
■「法律の壁」が調査を阻む可能性も
ドイツのピストリウス国防相は今回のケーブル損傷が発覚した段階で、「ケーブルが誤って切断されたとは誰も信じていないし、船のいかりが誤って損傷させた説も信じられない」と述べ、何者かによる破壊工作の可能性を指摘した。 今後の焦点は「伊鵬3」がケーブルの損傷に関与したのかどうか、そして関与していた場合は意図的だったのかどうかである。 しかし調査には法律の高い壁がある。現在、デンマーク水域で停泊している「伊鵬3」が疑われているとされるケーブル損傷は、あくまでスウェーデンで発生したものだ。デンマーク当局が「伊鵬3」の調査を行う権限があるのかは未知数だという。 コペンハーゲン大学のビューガー教授は「法律的な観点から見ると非常に厄介だ」と指摘し、「デンマーク海軍が中国船を永遠に止めることはできない。(調査などに向けて)どのような法的根拠を考え出すのか楽しみだ」と述べている。海洋安全保障の専門家ですら見通しが立たない、前例のない事態だという。
■高まるロシアのハイブリット作戦の懸念
2024年7月、イギリス中部バーミンガムにある物流大手DHLの倉庫で小包が出火した。ドイツでも小包の中に隠された発火装置が原因とみられる火事が発生していた。 ポーランドの検察は、宅配業者を通じて爆発物が入った小包をイギリスなどに送った疑いで4人を拘束し、同様の小包をアメリカやカナダに送るための予行演習だった可能性があると発表した。またイギリスのMI5(読み:エムアイファイブ)=情報局保安部の長官はロシアの関与を指摘している。 ロシアが様々なハイブリット作戦でヨーロッパへの圧力を強めていると言われるなかで、今回のケーブル損傷が発生した。現時点ではロシアとの関連や故意性は一切不明である。 海底インフラの損傷は、船のいかりによる事故や漁船の底引き網による事故によって引き起こされることもあり、「伊鵬3」以外の船舶が関係している可能性も捨てきれない。 いずれにしても「伊鵬3」の今後の動向や調査の行方が注目される。
テレビ朝日