中国船が関与か…バルト海で海底インフラ損傷 デンマーク海軍が追跡
■専門家は「例外的な事態」と指摘
「これは例外的な事態で、デンマーク海軍が中国船籍の船を止めたのだ」。こう見解を示したのは、海洋安全保障に詳しいコペンハーゲン大学のビューガー教授だ。ヒューガ―教授はデンマーク海軍が「伊鵬3」に何らかの接触を図ったとみている。そのうえで「各国が協力して、疑わしい船舶を迅速に追跡することができたことは良いニュースだ」と評価した。 背景にはバルト海などで海底インフラの損傷が相次いでいる問題がある。
■香港船が関与…海底インフラの損傷相次ぐ
2023年10月8日、バルト海の海底にあったフィンランドとエストニアを結ぶガスのパイプラインでガス漏れが確認された。フィンランド政府は当初から破壊工作を受けた可能性があると主張した。さらにパイプラインの損傷時にロシア籍の原子力貨物船「セブモルプーチ」と香港籍の貨物船「ニューニュー・ポーラーベア」が現場海域にいたとして、当局が関連を調べていた。 しかしロシアの海域に出てしまった2隻について、フィンランド当局が直接調査することはできなかったとみられる。SNSでは、ロシアの港に寄港した「ニューニュー・ポーラーベア」からいかりが無くなっていると指摘されていた。 そしてフィンランド当局は10月24日、パイプの損傷は香港籍の貨物船「ニューニュー・ポーラーベア」のいかりが引き起こした可能性が高いと明らかにした。海底からいかりが回収され、そのいかりにパイプラインと接触した痕跡があったという。 「ニューニュー・ポーラーベア」が香港籍だったことから、中国当局に調査を依頼したという。しかし損傷が事故によるものだったのか、意図的な行為によるものだったのか、不透明なままである。 この事案を受けて、NATO=北大西洋条約機構などは海底インフラが攻撃の対象となる可能性を危惧し、警戒を強めていた。 「伊鵬3」がデンマーク海軍によって迅速に追跡されたのは、「ニューニュー・ポーラーベア」が海底パイプを損傷させた事案の経験が生かされた可能性がある。