本場・中国でパンダ人気が再燃!彗星のごとく現れたトップアイドル「和花」がブームをけん引 競争社会の疲れを癒やし、愛国心も揺さぶる
中国メディアによると、5月の労働節(メーデー)前後の連休期間中、和花を目当てに四川省に26万人以上が訪れ、飲食代や宿泊費など観光客1人当たりの消費を1450元(約3万円)押し上げた。パンダ関連のビジネスで毎年約34万人の雇用が生まれており、数百億元の経済利益がもたらされているというデータもある。 しかし中国の象徴、パンダは国の誇りも背負っている。 今年、四川省雅安市にある和服姿のパンダ像の写真が交流サイト(SNS)に出回ると、「日本の伝統服を着せるな」と批判が殺到した。中国から米国の動物園に貸与されていたパンダが今年2月に死んでいるのが見つかった際には、中国国内で「虐待だ」と反米感情に火が付いた。パンダを巡る炎上が多発する事態に、中国メディアは「愛国心をアクセス稼ぎに利用すべきではない」とくぎを刺した。 ▽各国に貸与、外交カードに利用 ジャイアントパンダの主な生息域は中国内陸部の四川、陝西、甘粛の各省で、中国名は「大熊猫」。中国政府はパンダを「中国の国宝であり名刺」と位置付け、2022年の北京冬季五輪では大会マスコット「ビンドゥンドゥン」のモチーフにも選ばれた。野生のパンダは1800頭を超え、飼育下のパンダは700頭近くとされる。
中国はパンダの提供を通じて各国との関係強化や友好を演出する「パンダ外交」を展開しており、中国の習近平指導部は「大国外交」の切り札として、パンダを積極利用している。11月には米国との首脳会談実現を受けて新たにパンダを貸し出す意向を示唆し、米中関係の緊張緩和へ秋波を送った。中東地域への影響力拡大を図る中で、カタールにパンダを貸与した。パンダを「友好の使者」として各国に届けることで、中国脅威論を和らげる狙いも背景にはありそうだ。 「パンダの保護で協力を続けたい」。米国で開かれた11月15日の米中首脳会談後の両国友好団体による夕食会のスピーチ。中国の習近平国家主席は「多くの人がパンダとの別れを非常に惜しみ、動物園に見送りに行ったと聞いた」と語り、米国への新たなパンダ貸与をほのめかした。 その1週間前、米首都ワシントンのスミソニアン国立動物園で生活していたティエンティエンなど3頭のパンダが返還期限の延長がかなわず、中国に旅立った。米国には他に4頭が残っているが2024年末までに全て返還される計画で、半世紀にわたって両国の架け橋となったパンダが不在になる可能性が高まっている。仮に新たな貸与が実現すれば、「ゼロ」は回避される。