朝ドラ『おむすび』制作統括が語る平成&阪神・淡路大震災を描く理由「平成の人たちの生きた証を見せたい、そこから今を元気づけたい」
◆家族のコミカルなシーンも多い本作ですが、松平健さんをコミカルなシーンに据えた意図や起用理由を教えてください。 朝ドラ全スタッフが思っているのが、「皆さんの朝を楽しいものにしたい」ということなんです。私自身は『正直不動産』からプロデュースを本格的にやらせていただいているのですが、“本気で”皆さんを元気にするにはどうすればいいのかということを常に考え続けてきました。ストレートに元気になれるものを伝えたいと思ったときにお名前が浮かんだのが、幅広い年齢層の方々にパワーを与えていらっしゃる松平さんでした。カッコいい渋い役を演じる松平さんはこれまでたくさん見てきましたが、そんな中で、プロ野球チームのホークスを応援する法被を着た松平さんを想像したら、スタッフみんなが笑顔になって。これ以上の元気はないなと思いオファーさせていただきました。 松平さんも、ここまでのコミカルな役というのは初めてだとおっしゃっていたのですが、現場でも非常に楽しく演じてらっしゃって、それが家族の役の皆さんの絆にもつながっているのかなと思います。以前、撮影の裏側で皆さんが健康の話をしながら健康体操、ストレッチをしていて。それを見て、劇中だけではなくて裏でも本物の家族のようだと感じました。 ◆作中で震災も描いていますが、震災を描くことの意義や難しさなどを教えてください。 震災を描くというのはすごく難しいことで、ドラマを見てくださる方の気持ちを第一に考えないといけないなと思っています。一方で、阪神・淡路大震災の教訓や、そのときに感じた皆さんのつらさ、思いが今生かされているのかということを考えたときに、ストレートに真正面に描くことも大事なんじゃないかと思いました。震災から30年近くたって、震災のことを語れる人が減ったと聞きましたが、何が起こったのか、どんなことが大変だったのかということをちゃんと伝えたいというのが一つのポイントです。それをどう描くかとなったときに、物語に合わせて雰囲気を変えるというということではなく、全てを同じ熱量で作っています。ギャルの存在も未曾有の災害も、これが平成だったんだということをそのままの形で、全てをしっかりと描くということが難しいところでもあり、覚悟を決めたところでもあります。 ◆阪神・淡路大震災から30年ほどたっていますが、この時間の重み、今描くことの意味はどう感じていますか? まさに、時間の流れというのが本作の一つのテーマになっています。私自身、これまで自分事として感じることができなかったことへの申し訳ないという気持ちがあって。時間がたって、自分にも重なるはずなのに重なりきれてないといいますか…そのジレンマを持ち続けていました。他の方が過去に経験していることを、これから私たちも経験するかもしれない。私たちが一歩進むために、どうやったら自分事として考えられるか、過去の出来事からどう学んでいくかというのがすごく大事だと思っています。