希少疾患「デント病」抱えるDeNA大和 伝えたい「病気があったからここにいる」
DeNAのベテラン内野手、大和は国内で数百人しかいない希少疾患「デント病」を抱えながらプロの世界を生き抜いてきた。加齢にともない腎機能が低下する遺伝性の病で、50歳前後で末期腎不全へと進行するとされる。むくみや倦怠(けんたい)感といった症状と付き合いながらシーズンを送る36歳は、「同じ病気の方々に元気や勇気を与えられたら」と、一年でも長い現役生活を目標に掲げている。 【写真】川崎市内の病院を訪問したDeNAの大和。闘病中という少年は「プロ野球選手を見るのは初めて」と目を輝かせていた 「病気があったからこそ自分はここにいると思う。普通の人に負けたくない。ただ、その気持ちだけでした」。3日に川崎市内の病院を訪れた大和は、「プロ野球選手になりたいと思ったきっかけ」を問われ、病と闘う子供やその家族を前にまっすぐな言葉を口にした。 診断名がついたのは2022年12月。ただ、幼少期から腎機能に異常があり、定期健診を受けながら野球を続けてきた。血液を濾過(ろか)する機能を持つ腎臓は、体内の老廃物や余分な塩分、水分を尿として排出する。若いころはそこまで気にならなかったが、年を重ねるたびにむくみや疲れの取れづらさを感じてきた。 腎機能の状態を示す老廃物「クレアチニン」の血中濃度でみると、「僕の数値だと、普通なら入院して病院食を食べてる方もいると思うし、腎臓移植をしている方もいる」という。デント病と診断を受けてからは本格的な食事療法を開始。最低限の塩分量で過ごすため、球団の管理栄養士に別メニューを用意してもらっている。 チームメートとの食事会でも食べられるものは限られる。「自分の体のためと思えば我慢も苦じゃない」とはいえ、「食べたいものをなかなか食べられないのが現実ですね」と苦笑する。 しかし、スポーツに汗はつきもの。水分や塩分が制限される中で体調を管理するのはきわめて難しい。症状として顕著なのは手足のむくみだ。「バットを握ったときのグリップの角度が違ったり、ひどいときはスパイクが入らないこともある」。厚さのことなる2種類のバッティンググローブを使い分けたり、針治療で緩和させたりして対応している。記録的猛暑となった昨夏は「数値が上がって大変な時期があった」といい、「去年の反省を生かしたい」と日々自分の体と向き合っている。 アスリートとして必要不可欠なトレーニングにも制約がかかる。クレアチニンは筋肉を動かした後に出る老廃物で、数値が高くなると腎臓に負担がかかる。筋肉を肥大させるような負荷の高いトレーニングは避け、「筋肉痛をなるべく作らない、そのギリギリのトレーニングを毎日こまめにやる」ことで、必要な筋肉量を保っている。