コロナ禍でも止まらぬ成長 星稜の右腕・荻原と4番・内山 交流試合の注目選手!
8月10日から始まる2020年甲子園高校野球交流試合。球児あこがれの舞台での試合が間近に迫った32チームから注目の選手を紹介する。 【マウンドで吠える奥川】昨夏の決勝を写真特集で振り返る ◇奥川先輩の雪辱誓う右腕 荻原吟哉投手(3年) 2020年甲子園高校野球交流試合の第4日第1試合で、星稜(石川)は履正社(大阪)と対戦する。星稜のエースナンバーを背負うのが荻原吟哉投手(3年)だ。 「憧れ」の先輩である奥川恭伸(現ヤクルト)の雪辱を果たす機会がやってきた。昨夏の甲子園決勝で敗れた履正社との対戦が決まり、エースナンバーを引き継いだ右腕は「奥川さんの分まで相手を抑え、借りを返す」と力を込める。 上手から140キロを超える直球を投じる一方、「技巧派」の趣も備える。力でねじ伏せるのではなく、コーナーを厳しく突く制球力で打ち取るからだ。決め球は打者の手元で鋭く横滑りするスライダー。捕手の内山壮真(3年)が「打者がバットを振った後で曲がったと気付く」と評するほど。背番号11だった昨夏の甲子園は2試合に先発。昨秋は主戦として公式戦計37回を投げて防御率こそ2.92だったが、44奪三振で9与四死球。チームを北信越大会2連覇に導いた。 新型コロナウイルスの影響で全体練習がなくなった時期も「言い訳にしたくない」と体を動かし続けた。自宅での筋力トレーニングで体幹や下半身を重点的に鍛え、「直球の威力が上がった」と手応えを深める。 好きな言葉は「誰かのために」。中学3年の時、大腸がんで父誠司さんを亡くし、母桂子さんら支えてくれる家族への感謝を胸に練習してきた。「自分たちが一生懸命プレーすることで、大変な状況にいる人たちに何かを受け取ってもらえたら」。甲子園のマウンドは、思いを体現する絶好の舞台だ。 ◇長打と確実性兼ね備えた4番 内山壮真(3年) 昨夏の甲子園決勝の雪辱を果たそうとバットを振り込むのは、星稜の4番・内山壮真捕手(3年)だ。 柵越えを狙える長打と確実性を兼ね備えた、頼れる4番打者に成長した。身長172センチと小柄だがスイングスピードが抜群で、高校通算本塁打は30本を超える。 中学時代に軟式のU15(15歳以下)日本代表に選ばれ、高校でも1年夏から中軸として甲子園の土を踏んだ。1年秋からは4番を任されるが、昨夏の甲子園で大きな悔しさを味わった。履正社との決勝、同点の七回2死一、二塁で迎えた打席。カウント2―1からの4球目、真ん中の直球を力強く引っ張ったが、力んで左翼ポール際へファウルになった。結局四球で歩かされ、勝ち越せずにチームは敗れた。「甘い球を1球で仕留められなかった。負けたのは4番の差」。中軸の責任感が、いっそう練習に没頭させた。 成長の歩みはコロナ禍でも止まらなかった。約2カ月の休校期間中は富山県上市町の自宅で、素振りや筋力トレーニングに明け暮れた。打球の飛距離を伸ばそうと打撃フォームも試行錯誤。将来を見据えて木製バットでも打ち込み、「より強い打球が打てるようになった」と実感しグラウンドに戻ってきた。 交流試合の相手は、待ち望んでいた履正社に決まった。「対戦したいという思いの強さが引き寄せたのかも」と笑う。4番として「チームを勝たせる打撃をすること」を目標に掲げる。「今までの努力が試される場所」という大舞台での勝負を心待ちにしている。【石川裕士】