楽天とみずほFGの提携に見る「2つの懸念」…14.99%楽天カード株式取得の深い意味
既報の通り、楽天グループ(楽天G)とみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は11月14日、前日に発表した資本業務提携に関する報告と、両社の協業の成果となる「みずほ楽天カード」を発表した。 【全画像をみる】楽天とみずほFGの提携に見る「2つの懸念」…14.99%楽天カード株式取得の深い意味 資本業務提携ならびにみずほ楽天カードの詳細については既報のレポートを参照いただきたい。 この記事では資本業務提携の背景ならびに、みずほFG全体では「ユーシーカード(UC)」「オリコ(オリエントコーポレーション)」の2種類のカードブランドに加え、新たに「楽天カード」を合わせた3つのカード会社(イシュア)を抱える状況について分析する。
楽天の理由とみずほの本気度
資本提携の大きな事情としては、楽天Gの資本強化にある。 同社は楽天モバイルの先行投資が嵩んでグループ全体で赤字決算が続いており、2024年第3四半期決算でようやく5年ぶりの黒字化を達成した状況だ。 黒字化要因にはモバイルでの収益改善があるが、借入金の借り換えなどに伴う資金繰りの悪化はいまだ改善しきらないままで、実質的に綱渡り状態との見方もある。 過去に話題になった楽天銀行の東証プライムへの上場は、市場からの資金調達による資本強化が狙いの1つにあるが、一方で手元の資金不足を知る関係者らからは足下を見られる形で上場価格の引き下げに応じざるを得なかったなど、グループ全体での資金調達が課題となっている。 2023年から2024年にかけて、今度は楽天カードの上場が話題となった。 楽天銀行もそうだったが、楽天カードは楽天Gにとっての秘蔵っ子であり、この完全子会社をいかに使って資金調達するか注目が集まっていた。 折しも、楽天カードは2023年8月に楽天ペイメントの子会社化を発表しており、キャッシュレスやデジタル決済の世界での事業を楽天カードの下で集約しようとしていた。 一方で、他の金融事業についても楽天銀行を交えた組織体制の再編を検討し始めており、楽天銀行の上場を維持しつつ、これら金融子会社をうまく再編することで、その企業価値を高めるべく検討を続けていたとされる。 今回のみずほFGによる資本業務提携は、上場に代わる選択肢、つまり株式譲渡による資本提携で資金調達を可能にしたことで、同社にとっては渡りに船と言えるものだった。 両社が共同で発したプレスリリースによれば、みずほFGは1649億円で楽天Gが持つ楽天カードの普通株式の14.99%を取得する予定だ。 楽天銀行上場による株式の売り出しで楽天Gが市場から得た資金調達額は約700億円とされており、今回の提携はそれを上回るものとなる。