アフラック生命保険流!人的資本経営に向けた、アジャイル型の人事データ整備・活用とは
人的資本の情報開示が一部義務化され、企業ではデータ整備や定性情報の可視化が進んでいます。求められているのは、情報の開示ではなく、人的資本経営そのものを推進するためのデータ整備・活用ですが、どのようにして体制を整えていけばいいのでしょうか。 業界に先駆けて人的資本経営のためのデータ整備・活用に着手し、人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインである「ISO 30414」を取得した、アフラック生命保険の執行役員(人財マネジメント戦略担当)の伊藤道博さんと、人財戦略第一部人財テクノロジー課 長の穴沢真基さんに、そのポイントをうかがいました。
人財マネジメント戦略を進化させるべく、人事データ整備に着手
――貴社が人的資本のデータ整備や活用に取り組むようになった理由をお聞かせください。 伊藤:新型コロナウイルス感染症の世界的な流行をはじめ、人々の価値観や生活様式が変わっていく中、当社を取り巻く経営環境が大きく変化していました。 時代の変化にスピーディーかつ柔軟に対応していくために、これまでもさまざまな改革を行ってきましたが、これらを考え実行するのは人財です。したがって、多様な人財の力を引き出す「人財マネジメント戦略」が経営としてとても重要であると考えています。 2021年には、職務等級制度を基軸にした新人財マネジメント制度を導入。具体的には職務の大きさを基にグレードを定め、社歴や年齢、性別などに関係なく、真にパフォーマンス志向で人財を配置・登用する仕組みに変えました。 同時に、人事権を各部門に委譲し、事業の機動性と丁寧な人財マネジメントを両立する組織体制に変更しました。人事部は人財戦略部に名称を変更し、中央集権的な人事部ではなく、各部門の支援やコンサルティングを主なミッションとする組織となりました。 このように人事権を委譲すると、機動性が増すと同時に「遠心力」も働きます。そこで、各部門主導の人財マネジメントが機能しているのか、全社最適の観点で問題が生じていないか、経営側もしっかりとモニタリングしていく必要が出てきました。 たとえば、ある部門だけポストが無造作に増えていたり、ダイバーシティ&インクルージョンが進んでいなかったりすると、会社全体のバランスが崩れてしまいます。人財戦略部は課題も含めて状況を把握し、「求心力」を発揮していくことが大事になります。 一方で、きちんとデータを確認して、人財戦略部の支援が機能しているのかを分析することも大事だと考えました。たとえば、人財戦略部の支援は適切か、多様な人財の力を引き出し、社員一人ひとりの主体的なキャリア形成を実現できているかなどを、なんとなくではなく、数値で示せるようにしています。 人や組織は、決して完璧な状態にはなりません。何か制度を導入しただけでは解決しないので、理想に近づけるためにトライ&エラーを繰り返していく必要があります。人財マネジメント戦略を絶えず進化させていくために、データドリブンでPDCAを回していきたい。それが人的資本データの整備・活用を推進することになった理由です。 ――何から着手されたのでしょうか。 伊藤:人財戦略部内に人財テクノロジー課という専門部署を立ち上げました。 一般的に人事は常に忙しい。そのような中で、片手間で新しい取り組みをやろうとしても、なかなか前に進みません。そこで、新しい課を立ち上げ、データの整備やデジタルテクノロジーの活用に向けた取り組みを専任で担わせることにしました。人事の経験が豊富な人財、ITに強い人財、統計に詳しい人財を選抜し、社内IT部門や外部ベンダーも加え、8~10名規模のチームを組みました。 その際、人財テクノロジー課に割いた3名分の人員補充は行いませんでした。当然、3名分の仕事は、その他の人財戦略部メンバーが担うことになります。すると、選抜されたメンバーは、早期に価値を出さなければならないという気持ちになります。また、データ整備や活用が進めば、既存の人事メンバーの仕事もどんどん効率的になって「3名を送り出して良かった」という雰囲気になるはずです。そのような未来を見据えて、「みんなで頑張ろう!」とメンバーを鼓舞しました。