「減塩生活」は60歳で卒業しないとマズい。食塩が少ないほど寿命が縮まると心得よ
10万人規模の調査で、食塩は多すぎる害よりも、少なすぎるほうが体に悪く、食塩摂取量が10gより低くなればなるほど、急カーブで死亡率が上がるという結果が出ました。血圧を上げてしまう塩はワルモノ扱いされますが、高齢者が濃い味を欲するのにも理由があるのです。 【前編】「血圧が高いから」と薬を飲むと、脳梗塞のリスクが上がる! 残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』。日本で高血圧の人は20歳以上で2人に1人、高齢者の問題だけではないかもしれません。 前編<「血圧が高いから」と薬を飲むと、脳梗塞のリスクが上がる! 元気な百寿者ほど血圧が高いという真実>
減塩生活で低ナトリウム血症に
ある70代の男性が、「何か深刻な病気ではないか」と、クリニックを受診しました。近ごろ、疲れがとれない、吐き気がする、食欲がわかないといった症状を感じるようになったというのです。 その男性は、両親が高血圧で脳卒中になったため、自分はなりたくないと減塩を心がけ、血圧を上げないようにしてきました。刺身につけるしょう油はほんのちょっとだけ、野菜サラダもレモンを絞るだけでドレッシングはなし。食品を買うときには必ず表示を見て塩分量をチェックしてきたと言います。 しかし、この徹底した減塩が今回の不調の原因となった可能性があります。体に必要な塩分が不足すると、「低ナトリウム血症」を起こしやすいのです。低ナトリウム血症は、だるさ、嘔吐、食欲不振のほか、重症になると筋肉のけいれんや意識障害を起こし、早急な対応が必要になり、決してあなどることはできません。
血圧にとって塩分はワルモノ
多くの医者が「塩分を控えましょう」と言うのは、血圧を上げないためです。私たちの体には、血液中の塩分濃度を一定に保つ働きがあるので、塩辛いものを食べるとのどが渇き、水分をとって、血液中の塩分濃度を薄めようとします。その結果、水によって増えた血液を押し出すために血圧が上がる。というわけで、塩分は血圧を上げるワルモノにされてしまっているのです。 厚労省は、塩分の一日当たりの目標量を、成人男性の場合7.5g未満、成人女性6.5g未満と設定しています(「日本人の食事摂取基準2020年版」)。しかも、高血圧の人や慢性腎臓病の人は、重症化を防ぐために、男女ともに一日当たりの目標量6.0g未満とするべきとしています。 しかし、塩分というのは体にとって不可欠なもの。体液と電解質のバランスを調節し、血圧を健康な状態に保ち、筋肉や神経細胞の信号を伝達するなど非常に重要な働きをしています。私たちは塩分がないと生きていけません。そのため、腎臓には尿中のナトリウムをもう一度体内に戻し、ナトリウムを排泄しないようにするしくみがあります。これをナトリウム貯留能と言います。