〈トランプもプーチンもお手上げ?〉停戦合意が困難なロシア・ウクライナ戦争 停戦後のロシアに降りかかるワーストシナリオとは
「我々は、トランプ次期政権チームが提案してきたウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を20年凍結し、欧州と英国軍を駐留させるという案を、決して好ましいとは思っていない」 ロシアのラブロフ外相は12月30日、同国のタス通信のインタビューにそう発言した。米側の案は「タイム誌のインタビューと、リーク(情報流出)から得た」と説明している。 米タイム誌は12月中旬、トランプ氏へのインタビューを掲載したが、そこでトランプ氏はウクライナのNATO加盟問題には言及していない。それに先立つ11月上旬のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、トランプチームが非公式の案として、ウクライナの20年間のNATO加盟凍結を提案していると報じていた。 つまり、この案は実際にすでに米露間の交渉の机上に上がっている可能性が高い。WSJは、ロシア・ウクライナ間に約1290キロメートルに及ぶ非武装地帯を設けるなどの案も伝えていた。
困難な合意
ただ一方で、トランプ氏の案は合意の余地が極めて乏しいのも事実だ。 ロシアのプーチン大統領は12月26日、国内で開催した恒例の年末大記者会見で、「トランプ氏の案の詳細は知らない」としつつ、「米政権はかつても、10~15年ウクライナのNATO加盟を遅らせるという案を提示してきた。しかし、歴史的な時間軸に照らして、これは一瞬に過ぎない。これが今日であろうと、明日であろうと、10年後であろうと、いったい何の差があるというのか?」と述べて、米側の提案を一蹴した。 トランプ政権が本当に、ウクライナのNATO加盟を「遅らせる」という提案をしているのであれば、それはロシア側が絶対に受け入れることはないと筆者は考える。プーチン政権の目標がウクライナ全土を支配し、その国土をNATOとの間の緩衝地帯にするということにあるのは疑いがなく、米側の提案との差はあまりにも激しい。 ウクライナは自国の安全保障を確立し、再びロシアに侵攻される事態を絶対に阻止することが至上命題だ。NATO加盟でなくても、欧州、英国の軍の駐留によりそのような事態が避けられるのであれば、ウクライナ側は米提案を受け入れる可能性がある。 ただ、ウクライナ全土の支配を目指すロシアにとっては現状の凍結につながるものであり、容易には受け入れられない。にもかかわらず、そのようなロシア側の要求を大きく下回る提案しかトランプ次期政権から出ないのであれば、トランプ氏の大統領就任以降もロシア・ウクライナの妥協が大きく前進する可能性は低い。