「戻そうね世のお父さんお母さん」 多目的トイレの利用で困惑 「使えない方がいる」当事者訴え
「少し人に優しくできる余裕を持った行動ができる方が増えたらなと」
商業施設の多目的(バリアフリー)トイレを使おうとしたら、困った事態に遭遇――。おむつ台が下がったままで、元に戻されずに放置されていた。下肢のけがによって長時間の歩行が難しい当事者が、「戻そうね」とSNSを通して注意喚起を行った。おむつ台だけでなく、介護用ベッドやベビーベッドが広げられたままだと、車いす利用者がトイレ内に入ることができない、使用しづらくなるなど、ハンディキャップのある人たちにとって切実な事情がある。投稿者に話を聞いた。 【写真】忙しくて大変なのは分かるけど…多目的トイレの“困った利用方法”、実際の様子 「お手洗い空いてなくて脚の都合もあり多目的トイレ使わせて頂いたのだけど… またね…オムツ台下がりっぱなし お忙しいのは分かるし、荷物あって上げにくいのかもだけれど 戻そうね世のお父さんお母さん」 おむつ台の利用について切なる思いをXにつづったのは、カイ(@bw0531)さん。元介護職で、現在は農家兼事務職の仕事に就いている。 カイさんは困難を抱えている。「学生時代の下腿粉砕骨折、プレート接合手術により、数か月の車いす生活と松葉杖生活を経験しました。現在はプレート摘出済みです」。 足首可動範囲低下の後遺症によって、長時間の歩行や立位に支障がある。トイレ利用も大変な部分があり、「洋式でないと支障があるため、和式のみや洋式が混み合っている場合に、多目的トイレを利用させていただいています」と明かす。 自身のこれまでを踏まえて、「過疎地居住のため周辺には高齢者も多く、元の職が介護でもあり、車いす自体が比較的身近にある環境を経験してきました。それに、過去数か月の車いす生活を通して、車いす使用での病院内と日常生活上の困難の度合いの差にギャップを感じていました」とカイさん。 また、X上で車いす利用者との交流も持っており、日頃から車いす利用者が抱える悩みを見聞きし、気にかけてきた。「車いすを文字通り、日常の『脚』として使用される方にとっては、1人でお手洗いが使えるということは、外出意欲や外出時の不安要素解消の面で影響が大きいです。そういったこともあって、少しでも注意喚起や改善につながってくれたらなという意図で投稿しました」と説明する。 多目的トイレの設備の使い方には、きめ細やかな配慮や気遣いが必要だ。今回のようなおむつ台の場合は、育児のバタバタでついつい戻すのを忘れることがあるかもしれない。トイレを出る前に、原状回復を確認するなど、誰でも使える状態にできるよう、少しでも心がけたい。 カイさんは「メッセージというほど大げさではないですが、私を含めて多くの方は経験のないことには想像がどうしても及びにくいものです。特にメディアの方には、当事者の声を1つでも多く届けていただき、少し人に優しくできる余裕を持った行動ができる方が増えたらなと。全国のお父さんお母さんが大変なことは重々承知した上でということなのですが。そして、次に使う方が必ずしもおむつ交換台やベッドが必要な方だけではないということをお伝えしたいです。多目的ゆえに、下げたままでは使いづらい、使えない方がいるのだと知ってほしいです」と話している。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム