「LOVE ファッション 私を着がえるとき」展(京都国立近代美術館)開幕レポート。装いに見られる人間の愛と欲望
京都国立近代美術館 と京都服飾文化研究財団(KCI)が1980年からほぼ5年に1度開催してきた、ファッションをテーマとした展覧会シリーズ。その9回目のコラボレーションとなる「LOVE ファッション 私を着がえるとき」展がスタートした。 本展は、KCIの豊富なコレクションから各時代の流行やその時代を象徴する衣装約100点や、帽子、靴などのアクセサリー約20点を「LOVE」(=「着ることの愛」)というテーマで紹介するもの。衣装のほかには、 AKI INOMATA、ヴォルフガング・ティルマンス、小谷元彦、笠原恵実子、澤田知子、シルヴィ・フルーリー、原田裕規、松川朋奈、横山奈美 といった9名の現代アーティストによる約40点の現代美術作品も並ぶ。 企画者のひとりである牧口千夏(京都国立近代美術館主任研究員)は、「本展では、見る・見られるという冷たい視点ではなく、私たち自身が服とどのような気持ちで接しているか、服をつくるデザイナーの情熱や願望といった内なる情熱にフォーカスしている」とし、タイトルの「LOVE」について次のように述べている。 「『LOVE』という言葉には、愛情や欲望、情熱、さらには葛藤や矛盾など、ポジティブとネガティブの両方の感情が含まれている。『LOVE ファッション』というタイトルには、私たちのファッションを愛する気持ちと、皆さんにもファッションを愛してほしいという思いを込めている」。 会場は5章構成。入口では、横山奈美の「ネオン」シリーズから《LOVE》(2018)と題された作品が展示されている。横山が手書きで書いた文字をもと、ネオン業者にネオンをつくってもらう。完成したネオンを参照しながら、横山が再び絵画として描くという複雑なプロセスを経てつくられる作品だ。 本展の開幕にあたり、横山は同作について次のように話している。「文字には書いた人の個性が宿っていると思う。言葉も体を持つような存在であり、そのかたちや背景がその言葉を支えているように感じる。私の手で描いた文字は、私の身体から生まれたもので、その文字がネオンとなり、再び私が描くことで自画像になるのではないかと考えている」。
文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)