面倒くさがりでも意志の力いらず「続ける技術」 ダイエット、貯蓄、禁煙―挫折の末にこれを試せ
とはいえ、やはり効果的なのは罰則だ。StickK.comのユーザー約2万人を分析した最近の調査では、金銭的なペナルティを選択したユーザーは全体の3分の1にとどまったが、罰金が発生しないペナルティを選択したユーザーに比べて約束を実行する可能性が4倍以上高いことがわかった。 コミットメント・デバイスは魅惑的な戦略だ。心理的コミットメントや選択肢の排除、あるいは抑止力となるペナルティなど、さまざまな方法があるが、いずれの方法も、未来の自分にとって忠実な行動を取るための助けとなる。
この戦略の効き目がもっともあるのは、誘惑に弱いことを自覚している人だろう。自制心を呼び起こすにはまず欠点を排除しなければならないが、実際はその欠点に寄り添うことが、自制心を発達させ強化するための重要なステップになるというのも皮肉な話だ。 「壊れていないのなら修理する必要はない」という格言(If it ain't broke, don't fix it.)があるが、先ほどの研究結果はこの格言に微妙な意味合いを加えている。つまり、完全に壊れていないと思われる場合でも、本当に壊れていないのかを確認する必要があるということだ。
■抑止力としてペナルティを利用していく 未来のために現在の生活を改善しようと思うのなら、まずは自分を誘惑するものが身のまわりにあるかどうかを確認し、それが何かを特定することが大切である。とはいえ、特定しただけでは不十分だ。コミットメント・デバイスが初期段階でうまく機能すると、その成功体験に達成感を覚えるため、デバイスはもはや不要と結論づけてしまう危険性がある。コミットメント・デバイスの中断を検討する際は、自身の過去の失敗を心に留めておいたほうがいいだろう。
コミットメント・デバイスは、利用してこそ効果を発揮する。あまりにも厳しすぎると受け入れられない。解決策としては、あくまでも適切な罰が与えられるデバイスを採用することだ。つまり、ルールを破った場合に与えられる罰は、抑止力として十分な機能を持つものでなければならないが、危険を冒したくないと思えるほどの痛みを伴うものであってはならない。
ハル・ハーシュフィールド :UCLAアンダーソン・スクール・オブ・マネジメント教授