面倒くさがりでも意志の力いらず「続ける技術」 ダイエット、貯蓄、禁煙―挫折の末にこれを試せ
「適切な罰を与える」戦略については、研究者も実験を重ねている。この種の「罰金制」のコミットメント・デバイス(自分が誘惑に襲われることを事前に予測して対策を立てることを指す)については、食べ物や運動以外でも成功例が見られる。 たとえば、ある6カ月間の禁煙プロジェクトで、禁煙に挑戦する参加者の口座にお金を振り込むという試みを行った。 6カ月後の尿検査でタバコを吸ったことが判明すれば、お金は没収され慈善団体に寄付される。約10人に1人の喫煙者がこのプログラムに参加。その結果、参加者が6カ月後の尿検査に合格する確率は、参加しなかったグループに比べて3%高かった(ちなみに1年後の抜き打ち検査でも合格する傾向が高かった)。
同様に、中途引き出しのペナルティがある投資口座は、同じ利率が保証されている、ペナルティのない口座に比べて多くの預金が集まることが、行動経済学者のジョン・ビシアーズのチームによって判明している。これは401k(アメリカの確定拠出年金)など、金利は保証されているが、期日前に預金を引き出すとペナルティが課されるケースと同じ理屈である。 健康的な食生活、禁煙、貯蓄――。こうした習慣を促すコミットメント・デバイスに共通するのは、第三者がペナルティを与えること、そのペナルティが自動的に発生することだ。
おわかりだと思うが、この点はコミットメント・デバイスにおいて重要だ。なぜならみずからペナルティを課す場合、あるいはペナルティを課す基準があいまいである場合、言い訳をして罰を免れることができるからだ。 ■罰金アリはナシよりも実行性が4倍高い ノースウェスタン大学の行動経済学者、ディーン・カーラン教授のチームは、ダイエットや禁煙などの習慣化を後押しするサイト「StickK.com」を開発し、好評を得ている。この成功のカギは、第三者によるペナルティだろう。
たとえば毎日30分ウォーキングしようと決めたらサイトにアクセスして「1日30分歩く」目標を設定する。ここで、クレジットカードの番号の登録が求められる。もしウォーキングをさぼった場合(本人、あるいは状況を判断できる身近な人「レフリー」が報告)、ペナルティが下される。懐が寒くなる程度の金額(自身が設定)がクレジットカードに課金され、当人が支持していない政治キャンペーンに寄付されることもある。 StickK.comに登録した目標が必ずしもペナルティと結びついているわけではない。罰金のないペナルティも選択肢にあるので、ノルマを達成できなかったからといって寄付をする必要はない。たとえペナルティがなくても、目標を達成できるだろう。