村田諒太に勝った38歳元プロボクサーが東京五輪狙い16年ぶりアマ復帰し歴史的勝利!「普通のおじさんじゃなかった」
「普通のおじさんじゃなかった」
“神の左”山中もぐっときていた。 「3ラウンド。向こうのペースになるかなというところでジャブから立て直して昔よりも冷静さがあった。ラウンドの間も梅下監督の話をしっかりと聞いていましたよね。成長してはるなと感じた。なにより気持ちがありました。自分からいってポイントをもらいました。プロを引退してから8年。復帰にかける思い、ずっと引きずっていた後悔…それらが3ラウンドの攻めに出たのでしょう。感動しました」 第1ラウンドから会場に響き渡る大声でアドバイスを送り続けていた内山も、「上出来だと思う。スタミナ負けでやばいかなとも思ったけど、3ラウンドは逆に手数が出ていた。相手も高校チャンプ。8年ぶりの復帰で勝ったんだから、たいしたものです。引退して8年間、何もしていない中での復帰なんて大変ですよ。アマは3ラウンドですが、200mの全力疾走を続けてやるようなもの。プロより過酷なんです。次はさらにパフォーマンスは上がるとは思います。期待しています」と、その戦いぶりを評価した。 敗れた須永は控室で体育座りをしていた。 「普通のおじさんじゃなかった。あたふたしてしまった。強かったし巧かった」 大学1年生は素直に敬意を表した。 「できればやりたくなかった。あの人がいなければ関東ブロック大会に僕が行けた。これで自分の東京五輪は終わったんで。目標がそこだったんで……あの人が出てきて…くそ!なんで出てくんの?という気持ちでした。困りました」 佐藤は一人の19歳の青年の夢を踏み越えて、9月に行われる”第二関門”関東ブロック大会へ進むチケットを手にした。 歴史的な1日だった。ボクシング界のプロアマ断絶の歴史は1928年のアムステルダム五輪に端を発している。リオ五輪からプロ解禁されたが、日本は同意せず、わずかに指導者資格の回復例があるくらいだった。だが、山根体制がスキャンダルにより崩壊。新体制となった日本ボクシング連盟と、プロ側が協議の場を持って雪解け、プロ引退後、6か月が過ぎているボクサーのアマ復帰が認められることになり、今回、佐藤が、その第1号となった。続けて同じく東京五輪を目指しているミニマム級で4団体を制覇した元世界王者の高山勝成も名古屋の大会に出場することになっている。