BTSのJINは除隊したけれど…「超少子化」に喘ぐ韓国で、女性・老人・孤児や脱北者までもが兵役の対象となる可能性
「シニア・アーミー」創設を主張する声も
このように、兵力確保のためならなりふり構わない国防部の態度に対し、韓国の若い男性たちは「これこそ強制徴用だ」と強く反発しており、「女性も徴兵制にすべきだ」という主張が広がっている。 女性の一部に対して義務服務を主張する政治家も登場した。4月の総選挙に出馬した李俊錫(イ・ジュンソク)改革新党代表は、公約の一つとして、「女性新規公務員の義務服務」を掲げた。「2030年から警察、海洋警察、消防、矯正職列で新規公務員になろうとする人は男女関係なく兵役を済ますことを義務付ける」という主張だ。 ただ、国防部は女性の義務服務の主張については、「時期尚早であり、また別の社会対立を呼び起こす恐れがある」とし、「現時点では考慮していない」と明確に否定している。 その代わり、一部では「シニア・アーミー」の創設を主張する声もある。中央大学政治国際学科のチェ・ヨンジン教授は中央紙『ハンギョレ』に寄稿し、「女性の義務服務は出産率を高めようとする国家的課題に背馳する」とし、「代わりに、現在55~75歳の約691万人の男性のうち1%が志願しても約7万人の予備兵力が確保できる」と主張した。 ちなみにチェ教授は、すでに23年6月に創設された「シニア・アーミー」(平均年齢63歳)という民間軍隊の代表でもある。 もちろん、ネット上では男性ユーザーからの反発が大きい。兵役は韓国国民共通の義務だが、なぜ女性は軍隊に行ってはならず男性には再入隊しろと言うのかという、「不平等」を訴える声だ。 ただ興味深いことに、世論調査を見ると、女性の義務服務やシニア軍隊の創設は、いずれも賛成の割合が高い。女性の義務服務に対する賛成(54%)は反対(34%)より20%も高く(24年2月KBS調査)、シニア・アーミー創設に対する賛成(56.4%)も反対(43.6%)より12.8%高かった(トマトメディア調査)。つまり、韓国国民は兵力減少問題に対する深刻な憂慮を共有しているのだ。 韓国と休戦ラインをめぐって軍事的に対峙している北朝鮮の常備兵力は118万人と推定される。一方、韓国国防研究所によると、韓国軍は今後10年間は47万人の兵力を維持するものの、その後急減し、2045年には常備兵力の規模が32万9000人まで減ると推計されれている。 北朝鮮の核ではなく、超少子化によって韓国の安保が崩壊する日が来るかもしれない。
金 敬哲(ジャーナリスト)