【海外トピックス】フォルクスワーゲン、ドイツ工場閉鎖を検討のインパクト
労使協議会は徹底抗戦の構え
VWブランドだけで2026年までに100億ユーロという巨額のコスト削減計画について、数ヶ月の交渉の末にVWブランドグループコアのCEOであるトーマス・シェーファー氏と労使協議会のダニエラ・カヴァッロ代表が合意したのは昨年12月です。その合意に基づいて、今年上半期で5億ユーロものコストをかけて部分退職プログラムや管理部門スタッフの削減などが実施されてきました。しかしわずか半年余りで、これでは不十分でドイツ国内にある10工場のうち、規模の大きい完成車工場と部品工場を少なくとも一つずつ閉鎖するという方針(※1)になったのですから、協力的だったカヴァッロ氏も寝耳に水だったのでしょう。※1:労使協議会の公表による カヴァッロ氏は、経営陣の責任は大きいとして、低価格EVの早期開発を怠ったことやリヴィアンへの50億ユーロの投資に疑問符を投げかけ、労働者にツケを払わせる工場閉鎖には徹底反対しこれを阻止する構えです。
経営側の言い分は
会社側は、コスト削減プログラムの進捗が十分でないことや、好転する見込みのない欧州市場や中国からの競争をあげてこの判断に至った理由としています。4日の説明会では、CFOのアルノ・アントリッツ氏が、VWブランドではコロナ前と較べて工場2個分の50万台の生産が減少したままで回復する見込みがないこと、長期的に見てもこの先1~2年で対策を打たないと将来が危ぶまれることに理解を求めました。確かに、VW乗用車の欧州での販売台数は2019年の176万台から2023年に135万台と24%減少(※2)しています。またアナリストの多くも、VWグループの昨年の世界販売台数924万台に対して生産能力は1400万台あるとして、キャパシティの削減は不可避であるとの見方を示しています。※2:ACEA(欧州自動車工業会)発表データ(EU+UK+EFTA)による 8月1日発表の第2四半期の決算では、今年1~6月のVWブランドの営業利益率はわずか2.3%で、営業利益(9億6,600ユーロ)はシュコダに抜かれました。アナリストからは追加のコスト削減や生産能力の調整は必要ないのかという質問が出ましたが、ブルーメCEOは、生産シフトを3→2に削減したりコストの高い夜勤を止めるなどの調整と、ドイツの人口動態による退職(自然減)で各工場の生産能力の25%削減が見通せていると、追加対策の必要性には言及しませんでした。 ブルーメCEOは、自らが打ち出した「トップ10」プログラムの下で、製品計画やプラットフォーム戦略を確定し、ソフトウェア開発の道筋を定め、中国戦略の見直しやコスト削減プランを策定して打つべき手は打った。今後はこれを実行し、何よりも「コスト、コスト、コスト」だと述べていました。またアントリッツ氏は、今後はVWパサートとシュコダ・シュパーブを同一工場で、開発中の小型EVのVW ID.2はシュコダモデルともども、スペインのマドリッドの工場1箇所に集約して生産する計画であることを明かし、グループシナジーを高めてコスト削減することを示しました。