【ホンダ・日産統合協議の裏事情】日産狙う鴻海、ゴーン級の大リストラを経産省に提案か…鴻海+3社連合が理想形
■ 拙速な資本提携では日産もホンダも共倒れ スバルやマツダ、スズキとの連携を強化し、「広義のトヨタグループ」が形成されつつある。19年にトヨタはスバルへの出資比率を20%にまで高めて以来、協業関係を深め、24年5月には日米でEV4車種を相互供給する計画を発表した。同じく19年にトヨタはスズキに5%を出資、商用軽自動車のEVの共同開発などを進める。 次世代事業だけではなく、トヨタは既存事業強化の視点でも連携を加速させている。たとえば、23年に日本を追い抜き中国、米国に次ぎ世界3位の自動車市場となったインドで市場占有率4割を持つスズキは、22年から自社開発のSUVをトヨタのインド工場に生産を委託した。 17年に5%出資したマツダとの関係でも、トヨタは収益源である米国で、アラバマ州に車両合弁生産工場を建設して21年から稼働させているほか、金融子会社であるトヨタファイナンシャルサービスがマツダの国内のクレジット会社に出資し、販売金融事業を共同運営している。 トヨタグループに、スバル、マツダ、スズキを加えた23年度のグローバル販売は約1642万台。「広義のトヨタグループ」は、前述した「3社連合」の2倍近い規模を誇り、すでに短期・中長期両方の視点から協業体制を構築している。 規模の利益を追求し、激しい競争で勝ち残ろうとする戦略には意義がある。しかし、早急に資本提携にまで踏み込めば、それが機能しなかった場合、日産、ホンダともに痛手を被ることになるだろう。 特に、今回は鴻海の攻勢をかわすために、性急に資本提携に傾いた面は否めず、今後、慎重にデューデリジェンスを行えば、日産の財務状況などで資本提携するにはまだ越えるべき課題が多いという事態になるかもしれない。 井上 久男(いのうえ・ひさお)ジャーナリスト 1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略! サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。
井上 久男