「おもちゃメーカー」が台湾有事のカギを握る? 日本企業に必要な危機感
現在、世界の紛争で欠かせなくなっている「武器」がある。ドローン(無人航空機)である。 【画像】台湾のおもちゃメーカーがさまざまなドローンを開発 筆者は以前、アフガニスタンなどでドローンを使った米CIA(中央情報局)のテロリスト掃討作戦を取材した。それをきっかけに、2015年ごろから実際に米軍の無人機「リーパー」のプラスチックモデルを購入してその能力を研究したことがあるくらい、ドローンには注目してきた。 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降も、現場ではドローンが大量に投入されており、紛争において重要なテクノロジーとなっていることを世界に見せつけている。 現在、東アジアで警戒心が高まっている台湾有事でも、おそらくドローンが重要な役割を果たすと多くの防衛関係者は見ている。 実は台湾でも、自国の有事を想定してドローンを活用する戦略が取られており、高性能ドローンを自前で調達するために動いている。 そしてその戦略を支えるのが、台湾・台中市が拠点のおもちゃメーカーなのだ。 現代では、民間と軍事で利用できるデュアルユースの技術が注目されているが、台湾でもドローンがそうした技術の一つとなっている。世界が不安定化する中で、テクノロジーの進化が国力と軍事力に直結する時代に、これからさらに民間技術に対する軍事部門からの需要が高まると分析されている。
有事に備え、おもちゃメーカーがドローンを製造
台湾政府と一緒にドローンの開発に乗り出しているおもちゃメーカーは、ラジコン好きにはよく知られる「Thunder Tiger(雷虎科技=サンダータイガー)」だ。 もともとサンダータイガーは、レジャーや商業用の無線操縦模型の製造・販売でよく知られてきた。1979年に設立され、40年以上にわたりヘリコプターや飛行機、マルチコプターなど、無線操縦模型業界の第一線で活躍。 2015年には、ドローン部門「TTRobotix」を発足させ、地上、空中、海洋の無人機の開発に力を入れ始めた。最近でもおもちゃとして、ドローンだけでなく、バイク型の無線操縦模型や、自分で組み立てるロボットなどを販売している。 台湾政府は、ウクライナでの紛争にドローンが効果的に使われているというリポートなどを検証。2022年のロシアによる侵攻が始まると間もなく、2024年半ばまでに3000機以上のドローンを調達すると決定した。そしてその製造を担うことになったのが、サンダータイガーだった。 サンダータイガーは、空中だけでなく、水中ドローンなど海の無人機(自律型潜水機)も開発しており、台湾は空海の両面で戦争に備えている。ドローンにはAIを搭載。ウクライナでの実践利用例などを参考にしながら開発を進め、敵の装甲車などを攻撃する爆発物も搭載できる軍事仕様になっている。